新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

国際的機密ブローカー「L」

 1937年発表の本書は、以前紹介した「一角獣の殺人」に引き続き、英国の諜報員ケン・ブレイクとイーブリンが登場するカーター・ディクスンの<H・M卿もの>。そもそもH・Mことヘンリー・メルヴェール卿の得意は怪奇な事件と密室の謎。しかし彼は陸軍諜報部長官なのだから、エスピオナージ色の強い作品があってもいいと思っていた。本書はまさにそれにあたる。

 

 「一角獣・・・」の事件で親密になったケンは、ついにイーブリンと結婚することになった。しかし結婚式を間近に控えた日に、H・M卿からの電報で観光地トーキー(デボン州)に呼び出される。与えられたミッションは、付近に隠棲しているドイツ人ホウゲナウアを探ること。この人物は「天才」と評判をとって、大陸から渡ってきた。彼が国際的機密ブローカー「L」の居場所を知っているらしいのだ。

 

        

 

 この人物は、WWⅠ時代には鳴らしたドイツスパイ。本当に協力する気なのか、何か企んでいるのか探れと言うのがケンに与えられたミッション。H・M卿の友人でもある、現地警察部長チャーターズ大佐に援けてもらえとある。ところが現地に入ったケンは、毒殺されたホウゲナウアの死体と遭遇する。

 

 ところが彼の従者は「ホウゲナウアは友人のケッペル博士を訪ねて行って、今ここにはいないはず」という。70マイル離れた村にドイツ人ケッペル博士を訪ねたケンは、ここでも毒殺された博士の死体を見つける。しかも2人の被害者の死亡時刻はほぼ同じだった。偽札偽造団と疑われたり、田舎警察に逮捕されたり、警官や牧師に化けて逃げまどったり、悪戦苦闘しているケンのもとに、イーブリンも応援に駆けつけて事件を追うのだが・・・。

 

 本書の最大の謎は「これって何の事件?」ということらしい。確かに殺人事件はあるし、不可能興味もあるのだが、読者は最終章まで何が起きているのかわからないと思う。解説では「これが新しいミステリーのなぞ」というのだが、単にドタバタ(例のファース)劇ではないかとも思う。

 

 やっぱり作者には、正々堂々不可能犯罪に挑んで欲しいですね。ちょっと残念。