新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

寡黙な中年のゲイ調査員ディヴ

 昨年ヒスパニック系のゲイ作家マイケル・ナーヴァの作品を2作紹介した。1978年発表の本書は、その先輩格にあたるゲイ探偵のハードボイルドもの。1960年代までは公民権問題と言えば黒人問題だったが、このころからゲイ(LGBTQ)問題になってきたという。

 

 作者のジョゼフ・ハンセンは、特に西海岸で熱くなるゲイ解放運動を見て、このシリーズの構想を得た。中年のゲイ保険調査員デイヴ・ブランドステッターものは、本書が第4作、その後も続いた作品群である。

 

 LAの保険会社の重役の息子デイヴは、中年の保険調査員。ゲイであることを明かし、両親もそれを認め始めている。今回はカリフォルニア州の田舎町ラ・カレタの警察署長オートンが殺された事件の調査にやってきた。オートンは息子も警官、地域では「誰もが怖れた男」と言われ、特に黒人とゲイに厳しくあたった。

 

        

 

 娘のアニタが黒人の青年レスターと結婚したいと言い出したら、すかさず遺産を渡さないよう手配するし、レスターを無実の罪で刑務所送りにしていた。警察は以前署長に対し「殺してやる!」と叫んでいたゲイの運動家ケアリーを逮捕し、殺人罪が確定しようとしていた。

 

 普通ならこれで一件落着なのだが、司法の判断とは別に保険会社は独自の調査をする。もし相続人である妻や息子(ケアリーを捕えた張本人)が殺害や事件の隠ぺいに関与していれば、保険金を払わなくてもいいからだ。

 

 デイヴは行方不明のアニタや、仮出所しているはずのレスターを探す一方、地元のゲイグループや現場に近いところのパブ、ギャラリーなどで聞き込みを続ける。デイヴの行動が気に入らないらしい連中は、タイヤをパンクさせたりモーテルを荒らすなどの嫌がらせをしてくる。

 

 マーロウの後継者を思わせる、寡黙なデイヴの行動が格好いい。未成年のセシルとのベッドシーン(!)もあるが、いやらしさは感じさせない。ハードボイルドとしての基本はしっかり抑えた作品でした。でも、これ以上読むかどうかは???