新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

8人の天才たちvs.コロンボ

 本書は「刑事コロンボ」の放映シリーズの中でも評判が高かったものだが、なぜかノベライゼーションが遅れて、2000年にようやく出版されたもの。原作もノベライゼーションも同じ、W・リンクとR・レビンソンである。

 

 「Gifted」と呼ばれる優秀な子供たちを英才教育するのは、特にエリートが多い米国東西海岸地帯では普通のこと。ロサンゼルスも、その中心地のひとつだ。今回の舞台となるのは、人口の2%程度しかいないIQの高い人間だけが入会を許されるクラブ<シグマ協会>。協会員は厳しい選抜テストに合格しなくてはいけないが、協会そのものにカネがあるわけではなく、名誉が得られるだけ。

 

 協会のロサンゼルス副支部長ブラントは、自身の企業の共同経営者で協会運営委員でもあるバーティを抹殺しようとしていた。次期協会支部長の座というより、企業経営で横領を嗅ぎつけられそうになったのが主な動機。

 

        

 

 ブレントはバーティを射殺した後、強盗がかれを殺したように見せかける偽装をし、アリバイ工作もして協会の談話室に戻った。そこで7人の協会員と歓談している時、仕掛けた銃声がして、誰かが階段を駆け下りる音がして、自分は潔白だと証明したつもりだった。

 

 そこに現れた殺人課の警部コロンボは、例によって関係者(容疑者)を煙に巻きながら、捜査を始める。天才を自認する天才たちは興味津々、次々とコロンボ警部に、

 

・強盗じゃないですよね、偽装工作は・・・

・自殺だと思いますよ、弾道が・・・

・犯人は窓から逃げたの、階段じゃなくて・・・

 

 のような推理を聞かせる。しかしコロンボは、それらすべての仮説を検証して不可能と断定して見せる。そしてついにコロンボ警部は、真犯人ブレントに迫る。

 

 TVドラマを見た記憶があり、面白かったことを覚えていました。天才たちとコロンボ警部の不釣り合いな対決。作中でブレントがコロンボに投げるパズルも含めて、印象に残る作品でした。