新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ヒュー・ベリンガーという男

 1979年発表の本書は、先月「聖女の遺骨求」を紹介したエリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第二作。実は現代教養文庫で17作目まで買ったのだが、3冊欠けていた。それが光文社文庫版で入手できた。本書と、第五作、第十作である。装丁はもちろん違うし、訳者も違うのでやや雰囲気が異なる。

 

 スティーブン王と従姉妹の女帝モードがイングランドの覇権を争った時期の物語なのだが、前作では内戦危機はシュルーズベリ修道院には迫っていなかった。しかし本書の冒頭、モード女帝に付いたシュルーズベリ城のフィッツ・アランやエイドニー家は、王に攻められて城を捨てて逃げる羽目になった。

 

        

 

 ヒューが次の当主になるベリンガー家では、王に付いたもののエイドニー家の娘ゴディスを嫁に迎える予定だった。王の残党狩りは激しく、降伏した94人を全て絞首刑にするほど。フィッツ・アランらも手配されてしまった。彼らはウェールズなどに逃亡したかと思われたのだが、実はゴディスは修道院が男装させて匿っていた。

 

 シュルーズベリ城の財宝は2人の従者が隠したようなのだが、その2人も行方が知れない。王の指示でカドフェルは処刑された94人の埋葬を司るのだが、数えると95体の遺体がある。ひとつの遺体は、処刑ではなく絞殺されていた。やがてその死体は例の従者の一人と分かり、もう一人の従者トロルドも負傷してカドフェルに匿われる。

 

 修道院に滞在するヒューに、ゴディスが見つかってはならない。しかしヒューはカドフェルの挙動に目を付けたらしく、頻繁に姿を見せ話しかけてくる。回復しかけたトロルドから財宝のありかを聞き出したカドフェルは、財宝とトロルド、ゴディスを逃がそうとするのだが・・・。

 

 本書では、後に州執行長官になりカドフェルを助けるヒュー・ベリンガーが初登場します。欠けていた輪を入手出来て、大河ドラマとして<カドフェルもの>を楽しむことができます。嬉しかったです。