2009年発表の本書は、ロンバルディア平原の田舎町クレモナ出身の大学教員、アレッサンドロ・ジェレヴィーニ氏の作品。著者はヴェネチア大学から東大を経て、本書発表当時は早稲田大で准教授を務めていた。日本文化・文学にあこがれて19歳の時に初来日、日本好きが高じて日本に居付いてしまったとある。
それでも故郷クレモナも忘れ難く、年に1度くらいは里帰りをしているらしい。そんな日伊往復の中で、両国の違いを感じて執筆したのが本書。日本人として「知っておいて損のないこと」が多数含まれている。
イタリアにも南北問題はあって、北部人は「不況や悪性政治の原因は全て南部にあり、北部が経済や税金で国を支えている」と主張する。南部人は「南部の不十分な発達は政治の勝手の結果で、南部に責任はない」と思っている。日本の都市と地方の関係に、似ているかもしれない。
ロンバルディア平原は左右に長く、クレモナは平原の中心地だが河口のヴェネチアまでは列車で4時間かかる。農業や軽工業で栄えた街で、市街に「ストラディヴァーリ広場」があってヴァイオリンが名産だという。筆者は日本の某教授を、ヴァイオリンの名工のところに案内できたことを誇らしげに書いている。
そういう特異点のような産業はあるものの、イタリアという国はだらしないことも多い。例えば郵便は翌日に届いたと思えば、1~2週間遅れでくることもザラ。筆者は日本人が5分の列車の遅れに怒るのをいぶかしんだが、イタリアでは5分遅れなど「ラッキー」と言われるくらい、ダイヤは通常乱れている。
夏のバカンス時期には商店も大半閉めてしまい、夏に里帰りした筆者は母国でしか手に入らない書籍を購入しようと書店に行ったが「バカンスだから注文しても無駄だよ」とざいこの有無さえ調べてくれなかったという。
しかしさすがは食の国、ジョレヴィーニ家のクリスマスディナーには、一族23人が集まり、20種類の前菜・第一の皿は2種類のラヴィオリ・第二の皿は肉を中心にした6種類・5種類のチーズ・6種類のデザートに加えて豊富なフルーツが食卓に並んだとある。一族の女性陣が約1ヵ月をかけて準備したとのこと。
その他、カフェ・トラットリア・リストランテでのメニューの頼み方など、実用的なアドバイスが一杯ありました。最後のローマ旅行から5年になります。次はいつ行けるでしょうかね。