新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

フランス流の皮肉2冊分

 フレッド・カサックはパリ出身の作家、全部で7作の短めの長編小説を残した。1957年「死よりも苦し」でデビュー、大半の作品を1950年代に発表している。そのうち「日曜日は埋葬しない」でフランス推理小説大賞を受賞している。本書は、その前後に発表された2篇を合本したものである。

 

 表題作「殺人交差点」は、上記大賞の前にミステリ批評家賞を受賞したもの。200ページばかりの小編で、パリに学ぶ学生たちの交際(まるで男女6人夏物語)から始まる。ルユール夫人の息子ボブはカッコいいイケメン青年、平凡な娘シュザンヌに飽きて彼女を友人のベルナールに押し付けようとする。その一方クローディという娘にアタックを掛けている。クローディの法学部の仲間ジャックもグループに巻き込まれるのだが、本当のさや当ては美女なのに男に固いヴィオレットがやってきたときに始まった。

 

 6人の間に愛憎が渦巻き、ある日ボブとヴィオレットがついに愛し合おうとしたところに闖入者がやってきて2人を殺してしまった。闖入者はボブがヴィオレットを襲ってヴィオレットがナイフで反撃、傷を負ったボブが最後の力でヴィオレットを絞め殺したように偽装した。

 

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 夏の終わりに捜査は終了し、10年近くがたった。フランスでは捜査終了後10年で重要な証拠が出ない限り、事件は時効になる。時効まで4日を残して、関係者に「証拠を買わないか」と迫る強請屋が現れる。前半の愛憎劇から後半の強請屋がもたらすサスペンス、そして見事などんでん返しと皮肉な結末。さすがに受賞作だけのことはあった。

 

 もう1編の「連鎖反応」は、サラリーマンもの。金の工面を迫られた課長補佐のジルベールは、昇進のために上司を殺そうと企む。すぐ上の課長では疑われるので、一番上の社長を殺して空いた椅子に座ろうというわけ。涙ぐましい社畜の犯罪計画だが、うまく行き過ぎてしまい、総務部長にまで昇進する。しかし絶頂の彼を待っていたものは・・・。

 

 この作品も非常に皮肉な結末を迎えるのだが、実が2度日本でTVドラマ化されている。僕は目黒祐樹主演の物しか見ていないのだが、今はお騒がせ司会者となった関口宏主演で、TV朝日が1983年に放映している。できれば「日曜日は埋葬しない」も読んでみたいのですが、ちょっと手に入りませんかね。