新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

名古屋弁を話す検事

 「憲法おもしろ事典」などを紹介してきた弁護士作家の和久俊三、多くのミステリーの執筆しているが一番多いのは「赤かぶ検事」ものではなかろうか。検察事務官からたたき上げ、副検事に昇進、高年齢になってからようやく検事に任官した柊検事が主人公である。

 

 TVシリーズでは、名優フランキー堺が柊検事を演じていた。原作でも柊検事の話ことばは「名古屋弁」、それを映像で演じるのは大変だ。僕がネイティブだからわかるのだが、名古屋弁をTVで話した俳優の中で一番上手かったのは植木等、二番目がフランキー堺である。関西弁などと違い、非ネイティブが真似るのはとても難しいのだ。

 

 一口に「名古屋弁」というが、愛知県の南部は「ずら、だら」の三河弁、北部は「みゃあみゃあ」の尾張弁に分けられる。「みゃあみゃあ」のもっとなまったのが岐阜弁、柊検事のことばは岐阜弁に近いと思う。正直、この言葉を活字で読むのは初めてだ。

 

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 本書は、その柊検事ものの短めの中編3編を収めたもの。検事は飛騨高山の名物「赤かぶ」が大好物で、高山勤務時代に市場で買った「赤かぶ」を法廷でぶちまけてしまったエピソードから、「赤かぶ検事」と呼ばれている。

 

 検事は中部管区の、松本・高山を経て下関に移籍している。本書の3編はいずれも長野県松本地検時代のエピソードだ。パートナーとして30歳そこそこで警部補に昇進した行天警部補が登場する。格闘技万能の美女で頭も切れるが、「信州のヤマネコ」と呼ぶ人もいる女傑だ。

 

 表題作の「蛇姫荘殺人事件」は、富豪である商社社長と女優の夫婦が結婚記念日にお互いを殺そうと企んでいるシチュエーションで始まる。2人とも日記や手紙に2日後の日付で「配偶者が死にました」と書いているのだ。その通り2人は密室となった別荘の中で夫は毒殺され、妻は銃で撃たれて瀕死の状態で助け出される。

 

 他の2編も含めて、不可能興味はあるし怪しげな状況設定は面白い。しかし底は深くなくてヒネた読者なら見破れそうなトリックばかりである。時にはトリックですらないことも・・・。特に法律に詳しくなくても、読み物として手軽に楽しめるものです。やっぱり和久先生には、僕の法律顧問のままでいていただいた方が良さそうです。名古屋弁の指南も・・・僕には要りませんしね。