新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

混迷する第三次世界大戦

 2002年発表の本書は、セラミック外装の高速原潜<チャレンジャー>が主人公のシリーズ第三作。2年近く前に、第一作「原潜迎撃」と第二作「深海の雷鳴」を紹介してから少し時間が経った。南アフリカとドイツが枢軸を組み、英米連合軍の主力艦隊を奇襲で壊滅させて、ワルシャワなど数都市を核兵器で消し去ったという想定の第三次世界大戦ものである。

 

 第一作では<チャレンジャー>は南アの生物兵器研究所を奇襲、Seals出身でもあるフラー副長は研究所を破壊して潜水艦に戻るや、南アの冷酷なホルスト艦長が指揮するセラミック原潜<フォールトレッカー>の追撃を振り切った。第二作では同艦はバルト海に進出、ドイツのミサイル研究所を破壊した後、ドイツのセラミック原潜<ドイッチェラント>と交戦してこれを破った。いずれも陸戦と海戦のシーンが一杯の作品で、本書も舞台を太平洋の南から南極棚氷に移して宿敵ホルストとの闘いが描かれる。

 

        f:id:nicky-akira:20210123143550j:plain

 

 前作で負傷した<チャレンジャー>のウィルスン艦長は、代将に昇進し戦隊指令となった。後任艦長にはフラーが選ばれる。国際情勢は混とんとしていて、南米諸国は枢軸側に傾いているし、中立国タイの状勢も不安定。驚いたことに中立国日本が「核武装宣言」をして、北方領土の東海上で水爆実験に成功する。

 

 そんな中、南ア唯一のセラミック原潜<フォールトレッカー>はディエゴガルシア環礁を壊滅させるなど暴れまわり、これを始末しないと中立国が枢軸側に走るのではと連合国を焦らせる。刺客に選ばれたのはフラー艦長の<チャレンジャー>、ウィルスン戦隊指令も乗せた同艦は豪州原潜らとホルスト艦長を追うのだが、旧式原潜はむしろ足手まとい。たちまち何隻かが、ホルストに屠られてしまう。

 

 前2作にも増して、すさまじい核の嵐が南太平洋で荒れ狂う。ホルストは連合国の通信妨害のために海底光ファイバを核魚雷で吹き飛ばしたりする。対潜攻撃機からのものも含めて<フォールトレッカー>を同時に40発もの核魚雷が襲うのだが、ホルストはまんまと逃げ延び連合国の拠点を潰していく。焦った米国大統領は南極棚氷の下に潜むホルストを倒すため、オハイオ級2隻分の戦略核(水爆100メガトン)を南極に撃ち込もうとする。それを阻止するには、フラーがホルストを24時間以内に倒さなくてはならない。

 

 そろそろ、荒唐無稽の領域も超えそうな話になりました。仮に100メガトンを南極に撃ち込んだら、放射能被害の前に氷が解けて世界中大洪水になりませんかね?