新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

艦隊決戦のための可潜艦

 光人社NF文庫の兵器入門シリーズ、今月は「潜水艦」である。すでに同文庫の「本当の潜水艦の戦い方:中村秀樹著」は紹介しているので、重複のないように第二次世界大戦までの日本と各国の潜水艦について記しておきたい。

 

隠密性が命の難しい艦種 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 水面下に身を隠し目標に近づいてこれを奇襲する、そんな目的のために作られたのが潜水艦。いるかいないか、どこにいるかが分からず、相手は疑心暗鬼になって行動を制約される。そんな利点のある戦術兵器であるが、存在が探知されてしまったら、防御力は脆弱、速度も著しく遅いことからただの「獲物」になってしまう。

 

 注排水可能なタンク、水中駆動用の電池などスペースをとる「余計なもの」が多く、設計も難しい。居住性もギリギリまで削られ、乗組員は忍耐力を求められる。そんな長所短所のはっきりした艦種である。

 

 帝国海軍は日露戦争のときに「潜航艇」の開発に着手、第一次世界大戦には潜水艦隊を保有していたが、参戦はさせていない。日中戦争でようやく実戦参加をしたのだが、中国海軍は大した船を持っておらず、輸送船撃破くらいしか戦果はない。

 

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 最初は沿岸警備用の小型(500トンほど)な「海中型」を配備していたのだが、艦隊決戦構想の中で主力艦隊に随伴したり、その前衛を務められるような大型艦(1,000~2,000トン級)が開発された。

 

◆伊168(海大6型)

・基準排水量 1,400トン

・水上速力 最大23ノット

・航続力 14,000マイル

・水中速力 8.2ノット

・魚雷発射管 6(搭載魚雷14本)

 

 代表として空母「ヨークタウン」を沈めた殊勲艦「伊168」の仕様を記した。浮上して主力艦に随伴できる能力はあるが、あくまで「可潜艦」なので水中での行動力は充分ではなかった。また騒音も他国の潜水艦に比べれば大きく、連合国の優れた聴音機やレーダーで探知され、高性能爆雷やヘッジホッグで仕留められた。帝国海軍潜水艦隊は、太平洋戦争に190隻が参加し131隻を失っている。

 

 対して戦果は軍艦13隻、輸送船や魚雷艇など若干隻しか沈めていない。切り札と考えられた「酸素魚雷」も、期待ほどは役に立たなかった。これは本来通商破壊などに用いるべき艦種まで、艦隊決戦に特化して配備した「戦略ミス」ゆえといえるでしょうね。