新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

空気を読まない人たちの鼎談

 「Brexit」やトランプ現象などを受けて、世界が変わりつつあると警告する書は多く紹介した。2018年発表の本書もその一つだが、特徴はこのお三方が鼎談していること。まえがきにジャーナリスト田原総一朗氏が「空気を読まない榊原英資元財務官、竹中平蔵元経済財政担当大臣をお呼びした」と述べているが、ご本人もそれ以上の「空気を読まない人」である。何しろ、

 

この国をどうするのか! - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 で紹介した近著の題名が「殺されても聞く」なのだから。本書の題名は「AIと日本企業~日本人はロボットに勝てるか」となっているが、これは後で編集者が「売らんかな」と付けたものだろう。内容的にはAIもロボットも、ほんの脇役で登場するだけだ。では何が首題かと言うと「日本の組織論」である。Global & Digitalの流れの中で、生き残れるのは「自己否定」をいとわない者だという。

 

・「運転する歓び」を標榜してきたが、自動運転に舵を切る自動車メーカー

・「FinTech」に真剣に取り組み、支店・ATMなどを整理するメガバンク

・新しい住環境サービス開発に取組む、かつての総合家電メーカー

 

        

 

 などの例があり、逆に重電大手T社の名前を挙げて「粉飾」にいたった背景やメンタリティを議論している。いずれにせよ「Winner Takes All」の時代になり、何かで1番にならないと(企業も個人も)生き残れないのだということ。

 

 国際政治の観点からは、ほとんどの先進国が不安定な政治状況(政権の支持率低下等)に悩んでいるのに、中国は独裁体制で安定している。中国のような国は、独裁でないと統治できないのだという。日本も(モリカケ問題などあるが)なぜか安定している。これは民主党政権がひどすぎたので、誰も安倍政権を批判できないのだとある。

 

 ただ統合の時代は終わり、世界中に「分断」が巻き起こるだろう。しかしGlobal & Digitalの流れが停まるわけもなく、政治も経済も混迷を深めるだろうという結論だ。そんな中、生き残れる人の条件が論じられていて「難しい問題にぶち当たった時、面白がれる人間」だと、故松下幸之助氏の言葉を引用して締めくくっている。

 

 政界・官界・産業界・学界、いずれの人も、空気を読んでいるようでは、生き残れないよと言っているようです。