新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

遺伝子操作とゲノム編集の違い

 この本(2019年発表)を読んだきっかけは、遺伝子操作(GMO)食品規制はあるが、ゲノム編集食品についてはまだ規制はないと聞いたから。1990年代、米国で「腐らないトマト」が売り出されたが、GMO食品だったことから市場から追放されている。以後GMO食品に関しては、日本も含めて規制対象になっている。しかしゲノム編集で、肉厚なタイや大きく育つ豚などが出て来ても、まだ規制されていない。

 

 GMOはある生物の遺伝子に、外来の遺伝子を切り貼りして品種改良を図るもの。かつては偶然に頼るため、10万回やって1回成功のようなものだったらしい。ゲノム編集は例えば「筋肉を増やさない傾向のゲノム」を破壊するもので、外来遺伝子を使っていないから不測の事態が少ないとされる。破壊にはクリスパーという手法を用いるのだが、これで操作のやりやすさは飛躍的に高まっている。

 

        

 

 20世紀終盤に行われた「ヒトゲノム計画」で、人間の32億個のゲノム(AGCTの配列)は解読された。人間は99.9%のゲノムは共通だが、それでも32万個は異なっている。これが皮膚の色や身長、病気へのかかりやすさに関わってくる。もともと遺伝子と言っていたものはゲノムのごく一部例として太りやすい遺伝子は見つけられるが、それだけで太るかどうかは決まらない。

 

 ヒトの遺伝子調査(DCT)が盛んになっているが、日米政府の扱いが異なるという。米国では医療行為として、難病治療には使えるが目的は限定される。日本では医療ではなくヘルスケアの扱い。糖尿病予防などの参考データであって、難病治療など医療行為には使えない。

 

 食品のリスクはともかく、脅威に思ったのが「遺伝子ドライブ」という手法。例えば遺伝子操作をした蚊を群れにはなって、全滅させることも出来るとある。バイオハッキングという言葉もありました。この技術、大量破壊兵器に転用されかねませんね。