新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

潜水艦艦長の架空戦記

 本書は、以前「本当の潜水艦の戦い方」を紹介した中村秀樹氏の架空戦記。作者は海上自衛隊潜水艦長を経験し、防衛研究所での太平洋戦争の潜水艦戦史研究で知られた人。

 

隠密性が命の難しい艦種 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 テーマは定番のミッドウェー海戦だが、潜水艦を熟知した人の手になるだけに、並の架空戦記とは一線を画したリアリティである。手法はご存じタイムトリップ、海上自衛隊の潜水艦が1隻、1942年の日本海軍に加わるというもの。2016年の発表だが、登場するのはそのときすでに退役していた<あらしお>。多分作者が乗艦するなどして、十分知悉したフネなのだろう。

 

◆あらしお

 基準排水量2,450トン、潜航深度500m以上、水上速力12ノット、水中速力20ノット

 乗員75名、53.3cm魚雷発射管×6、C4ISTAR指揮管制装置、ZPS-6水上レーダー等

 

        

 

 タイムスリップした<あらしお>艦長本居二佐は、山本司令長官に会い(自分の世界の)史実を告げる。長官は「自分は戦死できるのだな」と納得し、<あらしお>を先行させてミッドウェー攻略に着手する。水上レーダーで米国空母艦隊を発見した<あらしお>はそのむねを急報、最後尾の<ヨークタウン>機動部隊を80式誘導魚雷で攻撃して空母を沈めた。

 

 その結果<ヨークタウン>航空隊に沈められるはずだった<蒼龍>が生き残り、他の米国機動部隊を襲い、<エンタープライズ>を撃沈、大破した<ホーネット>は水上艦隊が鹵獲する戦果を挙げた。しかしミッドウェーを占領した日本軍に対し、数ヵ月後準備を整えたハルゼー提督の3空母が迫る。

 

 手持ちの魚雷や対艦ミサイルが心細い本居艦長は、海軍の旧式魚雷も搭載する。確かに口径は合う。その際酸素魚雷ではなく、旧式の92式電池魚雷を使う。やはり酸素魚雷は危険物なのだ。

 

 専門家の架空戦記、とても面白かったです。もっと書いて欲しいのですが。