新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ダンカン・キンケイド警視登場

 1993年発表の本書は、ダラス生まれで英国好きの作家デボラ・クロンビーのデビュー作。複数のミステリー賞で、新人賞候補になった作品である。舞台は英国、ロンドン警視庁のエリート警視ダンカンは、弟に譲られた会員制リゾートホテルで休暇を過ごすため、フォートデール・ハウスにやってきた。絵本のように美しい街のホテルには、牧師の娘姉妹、生物学者、若手の議員夫妻、食品会社経営者夫妻、保険会社員とその娘、元軍人一家らが滞在していた。多くは(会員制なので)常連、ホテルスタッフとの顔見知りである。

 

 異邦人のようだったダンカンがホテル暮らしに慣れてきたころ、副支配人の青年がプールで感電死した。地元警察のナッシュ警部は自殺と決めつけるのだが、ダンカンは自殺でも事故でもないと考える。同じように考えた警部補を救うため、ダンカンは身分を明かし事件に介入する許可を本署から得る。

 

        

 

 無能だが尊大なナッシュ警部は激怒、2人の間には溝が深まる。それでもダンカンは青年が会員のことをつぶさに調べていたことをつきとめ、ひょっとすると強請ではないかと考える。彼は本書の部下である巡査部長ジェマに指示して、滞在している会員たちの過去を洗わせる。

 

 赤毛やそばかす顔が自分でも嫌いなシングルマザーであるジェマは、密かにダンカンを慕っていて職務の域を越えてイングランド中を駆け回る。ジェマの報告を聞きながら、ダンカンはレニー議員と学者のハンナの間、女支配人のキャシーと保険会社員グレアムの間に何かがあると感じる。

 

 ほぼ最後まで電話での会話しかできないダンカンとジェマ、意固地になるナッシュ警部、登場人物たちの秘められた過去、臨時の検死官としてやってくるアンとダンカンの軽妙な会話・・・。なかなか重厚な本格ミステリーで、これまで16冊が翻訳されているシリーズの開幕でした。秋葉原Bookoffで見つけてよかったです。もちろん続編を探しますよ。