新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

下腹部に悪魔の顔を刺青して

 1997年発表の本書は、サイコサスペンス作家ディヴィッド・マーチスンの「テディ・キャメルもの」。代表作「嘘、そして沈黙」は、マニアの間で<ウソチン>と呼ばれた話題作らしい。その主人公で<人間嘘発見器>とあだ名されるのが元刑事のキャメル。本作の設定では55歳だが、それよりずっと老けて見えるという。

 

 美しい妻と可愛い娘を持っていたが忙しく刑事稼業を続けていたキャメルは、妻の不倫と娘の妊娠という事態に慌て、それ以降「嘘」を憎むようになった。嘘を見抜く技術を身に付け、嘘には異常なほどの敵愾心を持つ。ただ、刑事を辞め私立探偵となったキャメルは、やや丸くなった。本書ではさほど嘘を憎むシーンや、見抜く技術を披露するわけではない。

 

        

 

 本書の原題は「カル・デ・サック」。DC郊外の古くて大きな病院跡の建物のことだ。ここではオーナーだった地元の名士の姪が殺害され、甥が殺人罪で有罪となっていた。甥は子供の頃から、動物の首を斬って飾る趣味があった。有罪の決め手となったのは、被害者の首が斬り落とされていたこと。甥は悪魔趣味もあり、下腹部に悪魔の顔を刺青している。ちょうど悪魔の舌の位置にペニスがあるように・・・。

 

 「カル・デ・サック」を買い取って補修し転売しようとしていたポールは、仮出所してきた甥に支配されてしまった。ポールの妻アニーは、20年前に恋人だったキャメルに助けを求めるが、ポールの周辺では首を斬り落とす殺人事件が相次ぎ始める。甥は「姪殺しはしていない、無罪だ」と訴え、当時17歳だった姪が多くの男と関係しているシーンの写真を探し求める。写真の中の一人の男が犯人だという。

 

 趣味の良くないエロ・グロシーンの多い作品で、他の小説のレイプシーンが可愛く思えるほど。今回初めて見つけた作者で<ウソチン>は未入手ですが、買うかどうかちょっと迷いますね。