新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「いけず先生」による京女の歴史

 2017年発表の本書は、NHK「いけずな京都旅」のコメンテータである国際日本文化研究センター井上章一教授の京都論。TV番組では軽妙に「いけず」と博識を披露している著者だが、てっきり文系研究者と思っていたら建築学の教授(建築史・意匠論)だった。確かに伏見稲荷大社などの歴史的建造物の紹介は、堂に入っていた。

 

 著者には、2015年の「京都ぎらい」という著書があり、他の著作より多く売れた。烏丸御池大垣書店には目立つところに平積みになっていたが「ほんとうは好きなくせに」とポップされていて、唖然としたとの記述がある。その「二匹目のどじょう」を狙ったのか、ちょっとエロチックな京都の歴史を紹介しているのが本書である。

 

 木屋町祇園は、色街・花街としての日本最高峰だが、もっと庶民的なエロもあると著者は言う。例えば<ノーパンしゃぶしゃぶ>は大阪発祥というのが俗説、実際は京都発祥である。

 

        

 

 歴史として、平安~南北朝時代の「京女」に関わるエピソードが多く語られている。鵺と呼ばれる怪鳥が京を騒がせたとき、近衛天皇源頼政に命じてこれを討ち取らせた。褒美は菖蒲という美女だった。だが頼政は100人集められた美女の中から菖蒲を選ぶことができなかった。彼女はこの100人の中では「並み」だったからだ。このように武力を朝廷が操るために、美女たちのプールが力の源泉となった。

 

 当然美女を巡っての争いも多く、天智・天武両天皇額田王を巡り、後深草天皇と西園寺卿が二条を巡り、源義朝の愛妾(*1)を手に入れた平清盛・・・。筆者は嵯峨野で育ち、子供のころから大覚寺などの観光地(&時代劇ロケ地)は普通に身の回りにあった。「水戸黄門」などは諸国漫遊などと言いながら、嵯峨野でいつもロケしているじゃないかと思っていた。

 

 TVで見るほどの「いけずさ」は感じませんでしたが、面白い書でした。これも京都旅のガイドブックにしておきます。

 

*1:常盤といい、義経らの母