新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

広尾発枕崎行き、13,000余キロ

 「時刻表2万キロ」という国鉄全線乗りつぶし紀行でデビュー(?)した作者は、一流出版社の役員を辞して次々と新しい鉄道の挑戦を行った。本書もそのひとつ、国鉄の最長一筆書き切符を購入し、実際に13,000余キロを完乗する話である。

 

 今のJRでもそうだが、同じ駅を二度通らない限りはどんなに距離が伸びても「片道切符」である。例えば東京から新宿に行くのにも、東海道新幹線で名古屋まで行き、中央線塩尻で乗換えて新宿というルートの切符を注文すれば、これで立派に東京発新宿行きの片道乗車券になる。

 

 本書にあるように、いろいろ細かな運行上の特例や特別な駅はあるものの、北海道から九州まで「最長一筆書き切符」を考えるのはマニアの楽しみの一つだった。作者が実際に広尾発枕崎行きの旅行を34日かけて行った1978年当時、僕は大学生で時刻表のクイズが大好きだった。例えばダイヤの大幅な改正があると時刻表の巻末に、「沖縄を除く都道府県の県庁所在地の駅を、全部回るのに何日と何時間何分かかるか?」という問題が出ていたこともある。これが当時の懸賞クイズだった。

 

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 だから本書が出た時(1983年)にはもう社会人になっていたのだが、急いで買って読みふけった。一言で「広尾発枕崎行き」というが、

 

 ・乗車キロ 13,118.4キロ

 ・乗船キロ 201.0キロ(青函連絡船、宇高航路、に堀航路)

 ・通過駅 3,186駅

 ・切符の有効期間 68日

 

 という途方もないものである。当時の値段で65,000円なり。駅の旅行センターで購入するときも大騒ぎになるのだが、実際に乗り始めて切符の券面に途中下車印が押され始めると、券面の表記が見えなくなってくるほどだ。検札に来る車掌さんの反応も様々で、驚いて声も出なかったり、「本当に(最長切符って)あるんだ」とつぶやいたり、淡々としていたり・・・作者はその反応も楽しんでいる。

 

 なるべく交差しないようにルートをとるため、近隣の駅間の線路を使わないで遠回りする。だから数日前に隣の水戸駅を通ったが、今ようやく友部駅に着いた・・・などということが頻発する。東海道豊橋まで行った後、飯田線小海線只見線などを使って会津若松まで戻るというアクロバティックなルートも体験する。

 

 もうなくなってしまったいくつもの線路、いくつもの特急・急行の名前を改めて見ることができて懐かしかったです。JRの路線もだいぶ減ってしまったものの、慰安でもこういう「ゲームのような列車旅」をしている人はいるのでしょうかね?