新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

空飛ぶ砲兵Ju-87

 第二次世界大戦の序盤から中盤にかけて、ドイツ軍の攻勢を支えたのは諸兵科連合の思想と制空権の確保というドクトリンだった。後者を担ったのは、Bf-109に統一された戦闘機隊だし、前者に寄与したのは急降下爆撃機Ju-87だった。

 
 電撃戦で「大陸軍国」フランスを倒したということで、ドイツ軍は機動力に優れていたと思われている。確かにフランス軍よりは優っていたが、それほど大きな差があったわけではない。多くの予算を動かない戦力であるマジノ線に投入したフランスは、ごく一部のAFVしか機動戦に耐えられなかった。一方のドイツ軍も、多くの補給は馬車に頼っていたし、AFVの進撃にあたっては通過する街のガソリンスタンドから燃料を現地調達していた。

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 尖兵が敵の防御拠点(例えば、トーチカに設置された機関銃や速射砲)に出会うと、戦車と歩兵を載せたハーフトラックが迂回して後方を遮断する。連絡線を断たれた敵軍の士気が低ければ、それだけで逃亡したり降服したりする。放っておいても立ち枯れるかもしれないが、どうしても突破せざるを得ない場合は砲兵の支援を呼ぶ。
 
 しかし進撃速度が速すぎると、砲兵の展開が終わっていないことも多い。フランス戦のころには多くの砲兵が自走化されず輸送車両も十分でなく、挽馬で移動していたからだ。そんな時役にたったのが「空飛ぶ砲兵」Ju-87だった。
 
◆Ju-87A-1(初期型)
 最大速度 310/km/h
 全備重量 3,35トン
 航続距離 1,000km
 兵装 250kg爆弾、7.92mm機銃×1
 
 急降下爆撃ならば精密な狙いができる。前面の厚いトーチカでも、上面はさほど厚くない。これを支えるのは、優秀な無線機を含むC3能力だ。
 
 Ju-87は陸戦だけでなく海でも活躍したものの、航続距離が短くイギリス上空の戦いではあまり役に立たなかった。もちろん空戦能力は低いので、敵戦闘機に狙われればカモ同然である。独ソ戦が始まって本格的な戦車戦が始まると、戦車を駆逐することも求められた。戦車も上面装甲は薄い。
 
◆Ju-87G2(対戦車型)
 最大速度 375km/h
 全備重量 6.59トン
 航続距離 1,530km
 兵装 30mm機関砲×2、7.92mm機銃×1
 
 シュツーカ(Ju-87の愛称)のエースであるハンス・ルーデルは、さらに強力な37mm高射砲を2門積むことを要求、出来上がった機体は「大砲鳥:カノーネン・フォーゲル」と呼ばれ、ソ連戦車の疫病神となった。