1998年発表の本書は、「海のディック・フランシス」と異名をとった英国冒険作家サム・ルウェリンがアリステア・マクリーン公認で「ナヴァロンの要塞」シリーズを書き継いだもの。このシリーズは、
「ナヴァロンの要塞」1957年(*1)
「ナヴァロンの嵐」1968年
の2作をマクリーンが書き、ルウェリンが、
「ナヴァロンの風雲」1996年
を書き継ぎ、その次が本書という位置づけである。前作で駆逐艦の追跡すら振り切れるナチスの高性能潜水艦を葬った、マロリー大尉・ミラー伍長・アンドレアの3人は英国に戻って早々、次の任務を与えられる。今度は、ナチスのミサイル基地とV4ミサイルを破壊せよという指令。
ペーネミュンデのミサイル施設を破壊した連合国だが、ナチスはエーゲ海の島に新たな基地を作り上げていた。断崖に囲まれた難攻不落の要害で、マロリー大尉は再び登山家としての力を発揮することになる。問題は、やはり登山家であるカーステアズ大尉が同行すること。マロリーが先任なのだが、彼の指揮は受けないという。
どんな事情かはわからないが、不協和音を抱えたままミッションが始まる。彼らは魚雷艇で島に潜入、島内の協力者と基地を目指すのだが、魚雷艇のクルーが負傷してしまう。その後は例によって、危機の連続。密林を進むうちシュトルヒ偵察機に見つかり、周囲に精鋭空挺隊員が60名降下してくる。カーステアズは不気味な動きをするが、魚雷艇艇長ウィルズ大尉は陸戦で意外な活躍をする。
本家に劣らないダイナミックな展開なのだが、昨今の軍事スリラーが「ド派手」なので、ちょっと割を食っているかもしれません。不死身のアンドレアや発破の専門家ミラー伍長の活躍は期待どおりでしたけどね。