「百番目の男」でデビューした、ジャック・カーリイの第二作が本書。主人公は、同じアラバマ州モビール市の特別捜査班カーソン・ライダー刑事。前作も異様なサイコ・サスペンスだったが、本書はそれを上回る奇怪さである。プロローグとして、30年前連続殺人容疑者ヘクスキャンプの法廷場面が描かれる。パリから来た芸術家の彼は、何人もの若い女性をはべらせ「カリュプソ」「ペルセポネ」などとあだ名で呼んでいた。
そのヘクスキャンプに6人の被害者を殺した連続殺人犯の容疑が掛かり、公判中に「カリュプソ」と呼ばれていた女がヘクスキャンプを射殺して自らも同じ銃で自殺してしまう。そのシーンから30年後の現在、ライダー刑事と相棒のノーチラス刑事は難事件(前作の事件のこと)を解決した功績で市長から表彰を受ける。
表彰から間を置かず、彼らを必要とする異常犯罪が起きる。被害者は中年の女性、死後一度埋められていたのを掘り出され、モーテルの一室で花を飾られ両目にはろうそくを立てられた寝姿で発見される。その後も中年女性の死体が2つ発見され、連続殺人(シリアル・キラー)事件と思われる。さらにヘクスキャンプ事件の捜査官や弁護事務所もからんできて、弁護事務所の弁護士もひとり失踪してしまう。被害者や失踪人のもとには、油絵を切り刻んだ一部とみられるものが送り付けられてきて、事件は混迷を深める。
捜査の過程でライダー刑事は、猟奇殺人犯の遺留品を集めるコレクターたちの存在を知る。被害者をベッドに縛りつけたロープや拷問に使った画鋲を詰めた袋などをライダーはコレクターの部屋で見せられる。どうやら作中に出てくる殺人犯の名前は本物らしい。さらに遺留品を高値で売買したり、オークションする闇マーケットがあることがわかる。このシリーズの特徴は、ライダー刑事の実兄ジェレミーが殺人犯として精神病棟にいるのだが、彼が貴重なヒントをライダー刑事に与えること。「蛇の道はヘビ」というがジェレミーには猟奇殺人犯の動きが読めるのだ。
今回もライダー刑事は実兄やTVレポーターの女性の助けを受けて事件の真相に迫るが、シリアル・キラーの魔手はライダー刑事にも伸びてきた。前作を上回る怪奇で眉をひそめるシーンが出てきます。ライダー刑事絶体絶命のピンチ!になるのだが、その時点ではキラーの正体がわかるのでほっとするくらいだ。うーん、評価の難しい作品ですね。