新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

国際的な反新自由主義運動

 2022年発表の本書は、国際NGO市民運動を続けてきたベン・フィリップス氏の反新自由主義運動論。地球上には種々の格差(国・地域・宗教・性別・嗜好・人種・民族等)があるが、究極的には1%のエリートが権力と富を独占し、99%の人から収奪を続けている。権力を握り狡知にもたけたエリートたちに対抗するには「団結し、あきらめずに闘い続けるしかない、小さな成功例を共有して希望をつなごう」という主張。

 

 筆者を始め多くの人達が声を上げ続けた結果、新自由主義国の政府や(カネの象徴)IMFも、意識を変えつつある。かつて彼らは、

 

・人は支援がなく自助の状況にある時、守られている時より生産性が高くなる

・規制が設けられなければ、富裕層(&企業)は最も生産性を高くできる

 

 と信じていた。しかし今は「不平等の放置は、不正義であるばかりか、経済成長を阻害し、環境問題への取組を妨げる」と考え始めていると筆者は言う。

 

        

 

 99%の人を、ただ何とか生き残れる状態にしておくよりは、人間らしく尊厳を持って豊かに暮らすように変えられるし、変えるべきだということ。では、それを成し遂げるにはどうするか。筆者によれば、

 

・分裂した組織に勝利はあり得ないので、まず団結すること

・類似の活動をしている団体と、多少の立場や意見の違いはあっても、連携すること

・粘り強く活動を続け、千載一遇の好機を待って、一気呵成に行動に移ること

 

 なのだそうだ。日々の努力で半歩前進のような勝利は、勝利を味わうという利点はあるが、変革に至らない。好機をとらえて根本から社会を変えてしまう変革(例:奴隷制度廃止、○○国憲法制定)をすべきだとある。

 

 筆者らのNGOの幾多の活動には敬意を表し、活動内容や成功例を知ること(情報の共有)は有用だと思います。しかし、長く砂漠に水を撒く活動を続けるだけでは、巨大なカネの流れに抗することは難しいように感じてしまいました。もう少し具体的な解決策を期待したのですが。