「神の汚れた手」などの諸作で知られる作家曽野綾子氏。1975年に始めてアラブの国を訪れ、以後交流を深めたと前書きにある。アラブ人の本音に触れるようになり、2003年に発表したのが本書。かなり警句的だが、彼の民族の行動様式を理解させてくれる書である。象徴的なのは「IBM」と略される特性。
I:インシャラー、神の心のままに
B:ブクラ、明日(以降)
M:マレシ、そうならない方が良かった
なので、律儀な日本人は「約束が違う、いつになったらできるのだ、いいわけをするな」と怒ることになる。しかし厳しい環境で生き抜いてきた彼らは、人間のできることには限りがあることをわきまえているのだ。いくつか紹介された格言で印象に残ったものがある。
・神はお前に一つのものを与え、もう一つを取り上げる
・断食して祈れ。そうすればきっと良くないことが起きる
・従順な振りをして騙せ。誰を?警察をさ
・尊敬は富に与えられるが、人にではない
・復讐するのは恥ではなく、恥を消す
・戦わない奴が戦争を奨励する
・無知は不治の病である
・矢も速く飛んでくるが、復讐はもっと速い。一番速いのは後悔
・あらゆる世代は先任者を呪う
・言葉は必要だ。嘘はそれに装飾を加える
・女はベールと墓以外何も持っていない
・幸運は持っている人間には来るが、探している人間には来ない
・本当のことを言うやつは、首を斬られる
・悲しみは生きている者のためで、死人にではない
・他人を信じるな、自分も信じるな
・小さな贈り物は心から、大きな贈り物は財布から
・お辞儀をした首は切られない
・忍耐に忍耐を重ねて墓場まで
・正義はよいものだ。しかし誰も家庭ではそれを求めない
・あなたの本当の敵は親友
・一回あなたをだました者は、百回だます
・花嫁を欲しければ、カネを使わなくてはならない
・家に老人がいなければ、一人買ってこい
・お前の息子の息子はお前の息子だが、娘の息子はそうではない
高名な作家は、これらの多くの格言からイスラム文化を学んだようです。その結果どのように作風などが変わったのか?その辺りが知りたかったです。