2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧
50年前の今日(1975.4.30)は、サイゴンが陥落しベトナム戦争が終わった日。1996年発表の本書は、軍事史研究家三野正洋氏ら3人の共著によるベトナム戦争の兵器ハンドブック。WWⅡ後、フランスの植民地支配からの独立を目指した戦いであり、後半は世界最強米…
2004年発表の本書は、日本政治思想史が専門の原武史教授とノンフィクション作家保阪正康氏の対談。テーマは昭和天皇である。未曾有の64年の治世(摂政時代を入れれば67年ほど)を体験した天皇の生涯は、近代日本そのものでもある。 対談の冒頭「昭和天皇は非…
2016年発表の本書は、トム・クランシー&ステーヴ・ピチェニック原案による<新オプセンターもの>。以前紹介した「北朝鮮急襲」と「暗黒地帯」の中間にあたる作品だ。実際に筆を執っているのはジョージ・ガルドルスキー。 イラク・シリア国境地帯で猛威を振…
2013年発表の本書は、フィクションもノンフィクションも、単著も共著もこなすデイヴ・エガーズのデジタルサスペンス。昨日「過剰可視化社会」で危惧されたことの、より重症化したケースをフィクションとして取り上げている。 <サークル>は巨大テック企業、…
2022年発表の本書は、「平成史」などを著した歴史家から評論家へと立場を変えたという與那覇潤氏の「可視化社会批判」。多くの日本人がSNSを使い始めた結果「ヒトの可視化」が進んでしまい、変な社会になったと筆者は言う。その変化を加速したのが「COVID-19…
1994年発表の本書は、以前デビュー作「警察署長」を紹介したスチュアート・ウッズのスリラー。アメコミ誌風の表紙で損をしているが、秀逸なサスペンスミステリーである。妻を亡くし一人娘のキャリーとも引き離されて服役しているウォーデンは、元DEAの麻薬取…
本書は、1987年に雑誌「野生時代」に短期集中連載された高木彬光の作品を、新書版で出版したもの。「刺青殺人事件」でデビューした作者と「明察神のごとき名探偵」神津恭介も、40年以上経って年を取った。恭介は三度の入院を経験していたが、その度にジョゼ…
2021年発表の本書は、昨日に引き続き柏井壽氏の京都解説。「COVID-19」禍で大打撃を受けている京都の街を見て、筆者がその復活を予測した書である。パンデミックの前、京都はオーバーツーリズム状態。東山の麓を巡る206号系市バスは、大きな荷物を持った外国…
行楽シーズンである。今日と明日、京都出身のエッセイスト(元は歯科医)柏井壽氏の京都紹介を取り上げたい。2019年発表の本書は<洛中通り案内>。京都の中心市街地は碁盤の目のように通りが東西南北に走り、住所ではなく「○○通り▼▼下がる」などと交差点名…
1981年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第五作。これも光文社文庫版である。現代教養文庫版に比べ、カドフェルが得意とする薬草のイラストが表紙に描かれていて、装丁が美しい。 イングランドの内戦は激化しているが、シュルー…
1994年発表の本書は、おなじみ津村秀介の「伸介&美保もの」。作者が2000年に急逝(享年66歳)してしまい、好調に積み上げられてきたシリーズだが、本書は終盤の作品となってしまった。このシリーズの特徴は、 ・主として日本の公共交通機関を使ったアリバイ…
2022年発表の本書は、ジャーナリスト大野和基氏が世界の英知にインタビューするシリーズの1冊。本書のテーマは「日本人はどう生きるか」である。トッド先生の「自律し核武装せよ*1」など大きな話ではなく、日本人の生き方に関するものかと思って買ってきた…
2006年発表の本書は、フランス革命前後の時代を背景にした作品群(*1)を紹介した藤本ひとみのクラシックミステリー短編集。やはりフランス絶対王政ルイ王朝での、女たちの闘いを描いた中編と3つの短編を収録している。 中編「寵姫モンテスパン夫人の黒ミサ…
1970年発表の本書は、多くの映像化されたホームズもののなかで、ビリー・ワイルダーが監督した映画「シャーロック・ホームズの優雅な生活」のノベライゼーション。脚本はI・A・L・ダイアモンドだが、ノベライズはハードウィック夫妻の手によるものだ。 ワトソン…
2020年発表の本書は、ジャーナリスト澤田晃宏氏の<ベトナムからの労働移民レポート>。先進国はどこでも労働力不足が顕著で、外国からの移民・実質移民に頼っている。日本は建前では移民を厳しく制限しているが、実質「技能実習生」という形で受け入れてい…
1981年「占星術殺人事件」でデビューした島田荘司は、当時若手本格ミステリーの旗手である。特に初期の頃は、デビュー作を含めて奇抜なトリックを駆使して読者を驚かせた。1986年発表の本書も、作者独特の奇想の世界を描いたもの。現代都市「東京」の一角で…
今日はタイタニックの悲劇が起きた日。本書はタイタニック号で未発表の原稿と共に沈んだ作家、ジャック・フットレルの第二短篇集。1900年以降現れたシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも、僕が一番好きな探偵オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼ…
2004年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶の「源平合戦分析」。平清盛が台頭した保元の乱(1156年)から、源頼朝が藤原氏を討つ奥州征伐(1189年)まで、23の戦闘を紹介している。古文書を読み込むだけでなく、作者特有のフィールドワークで実際にすべての戦…
1990年発表の本書は、詩人で数学者のジャック・ルーボーが実験的に書いたアンチ・ミステリー。作者はフランスの文学実験集団<ウリポ>の一員で、いくつもの詩集を出版している。小説としては本書に始まる連作がいくつかあるだけだが、訳者自身が「悪ふざけ…
2023年発表の本書は、今夏の参議院議員選挙への立候補を表明した泉房穂元明石市長の政治論。明石市出身で、障害を持つ弟への市役所の冷たさから政治を志した筆者は、2011~2023年にかけて明石市長を三期務めた。 その間に「優しい社会」を目指した努力を重ね…
2014年発表の本書は、歴史作家葉室麟の「藤原隆家伝」。昨年のNHK大河ドラマでも描かれた平安中期の京都と、元寇以前の外国の来襲があった対馬海峡から博多が舞台である。 二部構成になっていて、龍虎闘乱編では藤原家の権力闘争が中心で、中納言藤原隆家が…
1991年発表の本書は、ローレンス・ブロックの<アル中の元警官マット・スカダー>もの。このころのマットは、酒を断ちAA(アルコール自主治療協会)に通う日々。酒場にも顔を出すが、呑んでいるのはコーヒーかコーク(コカインじゃないよ)。高級娼婦エレイ…
2023年発表の本書は、以前「どうすれば日本人の賃金は上がるのか*1」などを紹介した経済学者野口悠紀雄教授の「アベノミクス批判」。黒田日銀は、マイナス金利・円安誘導・金融緩和のバズーカを止めるタイミングを物価上昇2%に置いていた。筆者はバズーカ…
1939年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ジョン・ディクスン・カーの<フェル博士もの>。珍しくオカルティズムも控えめで、密室も出てこない。物理トリックではなく、徹底的に心理推理を追求した作品である。 「曲った蝶番」事件で活躍したエリオット警部は、…
1988年発表の本書は、以前「凶手*1」などを紹介したアンドリュー・ヴァクスの<無免許探偵バークもの>。「フラッド」「赤毛のストレーガ」に続く、バーク登場作品の3冊目。解説を「○○の壁」の養老孟司氏(!)が書いていて、「凶手」がヴァクス作品の要約…
2024年発表の本書は、大阪維新の会の立役者だった橋下徹元府知事の日本政界への提言。岸田内閣末期で、内閣支持率は低迷しているものの、野党の支持率を全部足しても自民党支持率に及ばない状況だった。 野党第二党である日本維新の会は、馬場代表が「立憲民…
1936年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの初期作品。とはいえ、本作で<国名シリーズ>は途絶えてしまった。次の「ニッポン樫鳥の謎」は邦題で、原題は「The Door Between」である。 ニューヨークに帰る途中、トレントンで旧友の弁護士ビルに会ったエラ…
1995年発表の本書は、いくつも紹介してきたジャック・ヒギンズの<ショーン・ディロンもの>。以前「悪魔と手を組め」でのディロンが一番いいと評したのだが、本書はディロン以外の登場人物もみんな格好いい。全体として、一番好きな作品である。 北アイルラ…
2024年発表の本書は、ロシアの軍事研究家小泉悠氏のロシア太平洋艦隊研究。冷戦期のソ連海軍は、極東のウラジオストックとルィバチーに艦隊基地を持っていた。ルィバチーはカムチャッカ半島の東海岸にある島で、1960年代からSSBN(弾道ミサイル原潜)が配備…
1988年発表の本書は、英文学者でかつミステリー賞の常連ロバート・バーナードの作品。小説・映画・演劇に詳しい作者は、ヴァン・ダインを思わせるペダンティックなミステリーが得意のようだ。シェークスピアから現代劇までにちなみ、注記がないと日本人には…