2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧
本種は、何冊か紹介した国際経済連携推進センター(CFIEC)の研究書籍。2024年7月の出版で、やはり送っていただいたもの。今回のテーマは安全保障と経済のグローバル化。この2テーマに、24人の識者が論文を寄せている。紛争激化の時代となって、以前から懸…
本書は、以前「消えた装身具」「別館三号室の男」などを紹介したコリン・デクスターの<モース警部もの>。1993~94年に発表された短編11篇を収めたものだ。オックスフォード署のモース主任警部は名探偵だが傲慢で偏屈な男。独身で放埓な生き方をしているの…
本書は、歴史家でみすず書房の編集者でもあった高橋正衛氏が、「2・26事件」の背景からそれに至る道や裁判の結果までをまとめたもの。1965年に発表され、1994年に増補・加筆されている。 1936年の今日、昭和維新断行を唱えた野中四郎大尉以下1,500名余の部隊…
1934年発表の本書は、エラリー・クイーンの<国名シリーズ>第8作。作者が初めて密室殺人に挑んだものだ。このころ<密室の巨匠>ディクスン・カーの諸作が認められるようになってきて、何らかの対抗意識があったのかもしれない。 舞台はニューヨークのチャ…
本書は女王アガサ・クリスティが、全盛期(*1)に書き溜めて置いた「ポワロ最後の事件」。死後発表の予定だったが1975年に発表され、ほどなく女王は息を引き取った。ポワロは1920年のデビュー以来、55年間ミステリー界に足跡を遺した名探偵だった。 最後の舞…
2000年発表の本書は、これまで4冊を発表順に紹介してきたローラ・リップマンの「テス・モナハンもの」の第5作。荒事は苦手ながら、ボルチモアの街で徐々に探偵としての実績を積んできたテスだが、今回は大きな「敵」と渡り合うことになる。今回初めてテス…
1979年発表の本書は、正体不明の作家バリー・サドラーが書き続ける<不老不死の戦士カスカ>シリーズの第一作。ペイパーバックによくある、とんでもない戦闘力を持った個人/部隊の連続物語である。 冒頭、1970年のベトナム戦争。米国軍医は、運ばれてきた負…
昨年<刑事コロンボ>シリーズで、なぜかノベライゼーションが遅れた作品「殺しの序曲」を紹介した。本書はそれよりも珍しいもの、1975年に台本は出来ていたものの未製作に終わったのだが、その原稿を二見書房が翻訳出版(2003年)している。 甥っ子2人を連…
フォルステル大統領が前大統領らを見殺しにしたことは、米国メディアの働きで国際社会に露見した。しかしフォルステルは開き直って「今こそ新しい南アフリカをアフリカーナーの国(*1)に」とナショナリズムに訴えかける。 しかし国民の4/5を敵に回し、軍の…
1991年発表の本書は、以前「侵攻作戦レッドフェニックス」を紹介した、ラリー・ボンドの長編軍事スリラー。前著で紹介したように、トム・クランシーの共著者だった作者は他の共著者を得てヴィヴィッドな軍事スリラーをものにし始めた。 本書の舞台は南アフリ…
1938年発表の本書は、本格ミステリーベスト10の常連だった作品。ディクスン・カー(*1)の諸作の中でも三本の指には入るだろう。銀行家ヒューム氏は、かつては金庫室だった堅牢な部屋を書斎にしている。今日、彼はここでアンズウェルという青年を待っていた…
2023年発表の本書は、経済コラムニスト大江英樹氏の「お金に縛られない生き方のススメ」。世に「お金の増やし方」を書いた本は山のようにあるが「減らし方」とあったので、買ってみた。 前半は貨幣の意味を、物々交換経済にまで遡って説明する貨幣論。お金に…
コージーミステリーとは、米国でハードボイルドや(過激な)犯罪小説が流行った20世紀中ごろ、英国で台頭したミステリージャンル。「地域社会に密接・居心地のいい」というのが、Cozyの意味である。素人探偵が日常の中で、過度に暴力的でない事件を解決する…
1981年発表の本書は、先月「三本の緑の小壜」を紹介したD・M・ディヴァインの最後の長編。作者にはレギュラー探偵はおらず、ほぼすべてが英国の田舎町を舞台にした作品なので時代背景も特にない。だからだろうか、出版社はこの作品を(13作中の)2番目に翻訳…
予算審議が始まったが、各党票集めのためのバラ撒き(含む減税)の主張ばかり。そんな中<アゴラ>の記事で時折、正論を展開してくれるのが池田信夫氏。2015年の著作だが、戦後日本のリベラルがどう間違ったかを示したもの。 冒頭「全面講和・安保反対から、…
1985年発表の本書は、以前「わらの女」「死の匂い」などを紹介したフランスのサスペンス&ノワール作家カトリーヌ・アルレーの短編集。300ページの中に21の短編が収められていて、中には3ページで終わるショート・ショートもある。作風もまちまち、SF・ホラ…
1988年発表の本書は、山岳~ミステリー~幻想小説まで作風の広い夢枕獏の<安倍晴明もの>の最初の短編集。NHKの陰陽師番組に作者が出演していたことから、興味を持って買ってきたもの。実際の晴明は40歳過ぎても下積み官僚だったようだが、物語では40歳前(…
1985年発表の本書は、以前「赤毛のストレーガ」や「凶手」を紹介したハードボイルド&ノワール作家、アンドリュー・ヴァクスのミステリーデビュー作。「おれ」ことバークは、前科27犯の無免許私立探偵。あらゆる犯罪や人種がごっちゃになっている、ニューヨ…
本書は、福山隆・宮本一路両元陸相補の手になる、現代安全保障論。東日本大震災後の2013年に出版された内容に、ロシアのウクライナ侵攻などを受けて加筆し2022年に発表されたものだ。9年を経ても日本への脅威6つは変わっていないのだが、その程度はやや変…
1978年発表の本書は。これまで「愚か者の祈り」「事件当夜は雨」を紹介したヒラリー・ウォーのサスペンスミステリー。前2作は作者の初期から中期の作品だが、後期の本書は殺人犯に付け狙われる家族の側から、警察の活動(の制約)を描いている。 9年前、英…
本書は、先月「探偵倶楽部」を紹介した東野圭吾の短編集。1990年の「探偵倶楽部」までは「密室や暗号などの古典的な小道具が大好き、時代遅れと言われても拘る」と述べていた作者だが、1990~1995年にかけて種々の雑誌に掲載された短編は、本格ミステリーを…
2016年発表の本書は、脳科学者中野信子氏の「サイコパス解説」。平気で嘘をつき、それを暴かれても平然と「自分が被害者」と言ってのける人、人を傷つけても後悔も反省もせず、時に連続殺人・猟奇殺人をしてのける人は一定数いて「サイコパス」と呼ばれる。 …
2012年発表の本書は、元海軍中佐ジョージ・ウォーレスとジャーナリスト出身の作家ドン・キースが共作した軍事スリラー。ウォーレスはロサンゼルス級原潜<ヒューストン>の艦長も務めたことがある。キースと組んでの競作は、3作ほどあるらしい。 ロシア海軍…
1980年発表の本書は、昨年「聖女の遺骨求む」から紹介を始めたエリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第三作。薬草園を護る60歳近い無口な修道士カドフェルは、40余年前に別れた初恋の人リチルディスと再会する。十字軍に従軍するためやむなくの別…
アリステア・マクリーンの冒険小説をデビュー作「女王陛下のユリシーズ号」以降、第四作「最後の国境線」まで紹介してきた。本書は「最後の・・・」と同じ1959年に発表された第五作。舞台は酷寒の大地、グリーンランドである。 マイナス70度にもなる極北の地で…
2021年発表の本書は、軍事ジャーナリスト能勢伸之氏の現代軍事バランスレポート。取り上げられているは、昨今話題の「極超音速ミサイル」。ウクライナ戦争ですでに使われたとする説もあるし、北朝鮮が実験を繰り返しているとのうわさもある。細かな仕様(最…
2017年発表の本書は、昨年第二作「そしてミランダを殺す」を紹介したピーター・スワンソンの第三作。今度は登場人物の独白形式ではないが、複数の登場人物の視点で物語がすすんでいくことは同じ。時々時間が溯って、例えばケイトの経験したことをアランの視…
これまで幾多のアリバイ崩しもの「伸介&美保シリーズ」を紹介してきた津村秀介は、かつては<週刊新潮>の記者/ルポライター。同誌で「黒い報告書」の連載を担当していたという。<週刊広場>で「夜の事件レポート」担当の浦上伸介と作者とは、まさに表裏…