新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ピアニスト41歳の迷い

 本書(1980年発表)は、カメレオンのように作風を変えるポーラ・ゴズリングの第三作。「逃げるアヒル」でアクションものを、「ゼロの罠」でエスピオナージを発表して、本書「負け犬のブルース」は音楽界を深く掘り下げたラブ・サスペンスというべきだろうか?

 

 三作読んでの印象は、作者がプロフェッショナルにこだわりを持っていること。登場するプロ自身もこだわりの強い人物に描かれているが、同時に人間的な弱さをもっていて、物語の中でそれを克服できるかのサスペンスが生まれるというパターンに見える。

 

 主人公ジョン・コサテリはピアニスト、ウェールズとイタリアの混血でロンドンのライブハウスで演奏をするのが日常だ。子供のころから楽器に才を示し、クラシック奏者だったのだがジャズで短い期間一世を風靡した。その頃には、ローリング・ストーンズを抜いてヒットチャートの首位をとったこともある。

 

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 今はそのころ楽曲の印税と、酔いどれや心配性の演奏仲間とやるジャズのライブで収入を得ている。小なりとはいえ、スタジオをもてるくらいの生活だ。ある晩昔のセフレが訪ねてきたのを追い返したところ、彼女が死体となって発見され容疑を掛けられる。被害者の今の恋人は60歳を越えた実業家、コサテリを犯人と決めつけて復讐を誓っている。警察も直接の証拠はないが、無罪も証明できない彼をマークしつづける。

 

 事件が五里霧中の状態で、コサテリのところには転機が訪れる。「聖者」と呼ばれるクラシック界の重鎮が、クラシックピアニストとして厚遇しようと言ってきたのだ。代理人のレイニーは大喜びなのだが、コサテリは自信もあるが不安もあって決断しきれない。そんなときにコサテリは2人組の暴漢に襲われた。暴漢は「手をやれと言われている」と、左手を痛めつけた。さらに右手も・・・というところで知り合いの少年が警察を呼んでくれて一応数ヵ月のケガで済んだ。少年のカウンセラーでもあるベスと、この件で親しくなりアラフォー同士の恋が芽生える。

 

 殺人事件があり主人公以外の容疑者も見え隠れするのだが、作者の筆は寺家解決の方に向かない。狙撃されたりカーチェイスに巻き込まれたり、コサテリとベスに降りかかる災難ばかりが綴られる。ただ三作目で気づいたのだが、文章そのものは読みやすい。それでは第四作以降も探してみることにしましょう。今度はどんなジャンルですかね?