新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

GDPの2%を占める産業

 2005年発表の本書は、米国における「トンデモ訴訟」を集めたもの。米国は訴訟社会で、和解金などを含まない純粋な訴訟費用だけで、GDPの2%に達するという。1992年、79歳のステラさんはマクドナルドの熱いコーヒーを膝にこぼしてやけどをした。本人の過失が大きいのだが「熱いコーヒーを出した方が悪い」と訴訟を起こし、290万ドル(うち懲罰的賠償が270万ドル)の賠償金を得た。

 

 その後「都市伝説」のような話(*)が飛び交い、訴訟ブームが起きた。本書の筆者ランディ・カニンガムは、ネット上のこのような話を精査し、本当に訴訟が起きたものを選び出した上で、Webサイトに掲載した。それを書籍化したものが本書。

 

 *ホイールを盗もうとした男がその車に轢かれ事故の賠償を要求、これは嘘

 

        

 

 ここには「The True Stella Award」とされる、21世紀初期の受賞&候補案件が並ぶ。肥満、高脂血症で心臓病等を発症した人が、ファーストフード店やビスケットメーカを「食べるのを止めるよう注意しなかった」と訴えるなどは、まだ可愛い方。現行犯で捕まるとき撃たれた男が出所後警官を訴え、治療費や就業できなかった補償を求めることもある。

 

 面白かったのは集団訴訟。どう転んでも原告たちがお金を手にする可能性は宝くじより低いようだ。要するに弁護士たちの報酬で消えてしまうわけ。韓国の徴用工訴訟もそうだったよね。70件ほどの呆れるような訴訟顛末を示してもらった後、4件のテスト(読者が陪審員だったら)が用意されている。僕の成績は3勝1敗だった。

 

 何しろ訴えたい人(というより弁護士)は「何らかの訴えができそうな相手」を血眼になって探し、民事訴訟を濫用するのだからとめどがない。こんな訴訟社会にあっても普通の米国人は「弁護士が必要でない限り、付き合いたくない」といいます。お金にはなっても、尊敬はされていないようですね。