新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

唄う修道女の秘密

 1999年発表の本書は、エド・マクベインの<87分署シリーズ>第49作。1956年の「警官嫌い」から始まったこのシリーズ、ついに世紀末まで続いたことになる。今回も、複数の事件が交錯するが、メインとなっているのは修道女が扼殺され、公園に捨てられていた事件。担当するのはキャレラと大男の黒人刑事アンディ・パーカー。

 

 被害者の名前はメアリー、教会では模範的な修道女として働き、聖歌隊にも加わっていた。終末期患者の多い病院で、看護師としても働いていた。そんな彼女が、なぜ、誰に殺されたのか?

 

 もうひとつ、マイヤーたちが追う事件は、犯行現場に手製のクッキーを置いていくという空き巣狙い。通称「クッキー・ボーイ」。そして「寡婦*1」の事件でキャレラの父親トニイを殺した強盗ソニーが出所して、キャレラをつけ狙う話がからむ。

 

        

 

 検死官はメアリーは暴行されていないが、本当に修道女かとキャレラに聞く。理由は豊胸手術を受けていたから。キャレラたちは、メアリーの過去を洗い始める。一方クッキー・ボーイは、荒稼ぎはしないルールを決め細く長くの窃盗犯。窃盗しないと生きていけないので、これは犯罪ではないと信じている。臆病なほどに慎重な彼だが、無人と思って入った家でとんでもない事件に遭遇する。さらにソニーは、キャレラの日常をずっと観察していて、パーカーが一緒の時や大家族で暮らしている自宅では襲えないと考える。

 

 メアリーが5人組のバンドのボーカルだったことが分かり、キャレラたちは残りの4人に会おうとするが、すでに1人は死亡していた。ようやく会えたバンドメンバーから、彼らが頼っていたクラブ経営者がワニに喰われた事件を聞くことができた。

 

 後期のシリーズでセミレギュラーになった88分署の下品な刑事オリーが、本書にも登場します。そして因縁あるソニーとキャレラの絡みも、今回で決着しました。初期のころ、文庫で300ページだったのが、このころには新書で300ページと長くなりました。その分長く刑事たちの日常に浸れるのはいいのですが・・・。

 

*1:警官の父親を殺した容疑者 - 新城彰の本棚