スマイリーは解雇された要員の内から何人かを復職させたのだが、その中にサム・コリンズという男がいる。抜け目のない男で、コウ兄弟らの件についても役に立つのだが、スマイリーは信頼できない部分があると思っている。前作でのモグラの息が掛かっている可能性があるのだ。
スマイリーは現地香港の工作員老クロウ、「閣下」ウェスタビーの他に、コリンズも送りこんで別働隊とした。ウェスタビーたちはリカルドの足跡を追って、内戦続くプノンペンに向かう。リカルドはもちろんだがその同僚で、中国ハーフのチャーリーというパイロットが見つかれば手掛かりになる。
もはやロンノル政権も命運が尽きようとしていて、クメール・ルージュの大攻勢でロケット弾が降り注ぐ中、ウェスタビーはリカルドこそ逃がしたものの、チャーリーを捕まえることに成功した。彼も阿片の運び屋だが、自身も阿片中毒である。

最初は何も話さなかったチャーリーだが、薬の影響かついに泣き崩れて、リカルドのこと、コウのこと、その愛人のリジーという女のことを話し始める。リカルドがカネに困っていた時、ドレイク・コウが助けてくれた。かつてリカルドの愛人だった美女リジーは、コウの愛人になったという。リジーに香港で逢っているウェスタビーには、送金ルートの現在と過去が繋がって見えてきた。
一方英国では、スマイリーが困った立場になっていた。CIAとの連携で親米過ぎるのではとの批判や、香港での活動があまりにも回りくどいのではとの非難だ。しかしスマイリーは取り合わず、ウェスタビーにリカルドを追えと命じる。ウェスタビーは、ベトナム、ラオスからタイに入り、ついにリカルドに会った。
ドレイクの目的は、中国共産党のために働いている弟を救うこと。そのためにカネも使って綿密な作戦を立てていた。しかしスマイリーもその目的をつかみ、弟ネルソンを香港に渡る瞬間に確保しようとしていた。
「スパイするということは待つこと」を地で行くような、静的なサスペンスでした。隠語を含めた無駄口の会話が多いようにも思うのですが、それがある種のリアリティを伴っています。緊張感のある、シリアスな仕事なので、無駄口の一つも叩かないとやってられないのかもしれません。