2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧
1995年発表の本書は、津村秀介の「伸介&美保もの」。アリバイ崩しで延々シリーズを書き続ける作者だが、山陰地方を舞台にした作品は多くない。多分、 ・山陰殺人事件(1984年) ・宍道湖殺人事件(1986年) と本書の3冊だけだ。それには理由があって、米子…
2023年発表の本書は、出版社勤務から実業と著作の二刀流を続ける内藤博文氏の「歴史から見た首都の意味」。その国の首都がどこにあるかで、国の性格が見えてくるという。歴史的に首都の位置がどう変わったか、その時国はどうだったのかを研究した結果である…
以前全15巻の最終巻を紹介した、笹沢左保の「木枯し紋次郎シリーズ」。紋次郎はライバル峠花の小文治の最期を看取って、いずこへともなく姿を消した・・・しかしTV・映画業界が人気者を放っておいてくれるはずもない。解説には、1993年に「帰ってきた木枯し紋次…
峰隆一郎という作家は、時代(剣豪)小説家だと思っていた。確かに120冊を超える時代小説を執筆している。しかし、アリバイ崩しを中心に50冊近いミステリーも書いている。食わず嫌いもいけないので、初めて買ってきたのが本書。1988年発表と比較的初期の作品…
また秋の臨時国会で「規模ありき」の補正予算が組まれる怖れがあるが、昨日の「コロナ利権の真相」に続いて「TAX Eaterの実態調査」をご紹介したい。<日経紙>では2021年から「国費解剖」と題した連載を始め、国の予算の病巣を明らかにする調査報道をした。…
2023年発表の本書は、医療ジャーナリスト鳥集徹氏らがまとめた「COVID-19対策費の検証」。安倍政権は、国難だとして膨大な予算をつぎ込んだ。その規模104兆円は、東日本大震災の復興予算が32兆円(10年間計)だったことからも、ケタ違いの金額だったことが分…
1984年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第10作。前作で州の執行長官が亡くなり、カドフェルの親友ヒュー・ベリンガーが副長官から昇格し跡を継いだ。スティーブン王は幽閉されたままだが、女帝モードもロンドンに入城できない…
奇術好きのライターであるオットー・ペンズラーが、魔術ミステリのアンソロジーを企画し、1976年にハーパー&ロウ社から出版したのが本書。13編の短編が収められている。奇術とミステリーには「上手い嘘をつく」という共通点がある。 巻頭作はクレイトン・ロ…
本書も付き合いのあるNTT松原美穂子氏の新著、作者から送っていただいた今月出版されたばかりのものである。3年は続くロシア・ウクライナ戦争以前から、ウクライナの重要インフラへの攻撃は続いていた。サイバー空間は平時/戦時の境があいまいで、そこで最…
2012年発表の本書は、現代青春小説の作者バリー・ライガが、ジャズという17歳の青年とその仲間たちの活躍を描いた三部作の第一作。作者は漫画業界の出身で他に普通小説も書いているが、このシリーズは立派なミステリーである。 舞台は東海岸の州の田舎町ロボ…
2010年発表の本書は、以前「アフガン死の特殊部隊」を紹介したマット・リンの軍事スリラー第二作。10年ほど前に読んで、当時数多く出ていた特殊部隊ものの中で、もっとも好きなシリーズである。今回、2~4作が手に入ったので再読して順次紹介してみたい。 …
1982年発表の本書は、多作家西村京太郎初期の作品。すでにトラベルミステリーを量産し始めたころだが、本書は意欲的な警察小説である。9月の金曜日、OLが全裸暴行死体で発見される。採取された精液はB型の犯人を示していた。翌金曜日、今度は女子学生が同…
本書はロシアのウクライナ侵攻直前の2021年冬に、フランスで出版されたウクライナの歴史。筆者は東欧が専門の政治学者アレクサンドラ・グージョン(ブルゴーニュ大学)講師。ロシアは数々のプロパガンダでウクライナを貶めている(*1)が、真実の歴史はこう…
本書の発表は1987年、東西冷戦も末期である。作者のアントニー・レジュネは、海軍にいたこともあるジャーナリスト。政治関係の記者だが、<デイリー・メイル>などで探偵小説の書評を担当していたこともある。裏表紙に「東西秘密組織の死闘」とあったので買…
2024年発表の本書は、「防大女子」という著書のある防大経験のある女性ジャーナリスト松田小牧氏の「自衛官のセカンドキャリア」レポート。自衛官を辞める人は年間6,000名ほど、ほとんどの人が50歳代で第二の人生に入るという。 よくTVのコメンテータとして…
2020年発表の本書は、昨年の敬老の日のころ「もう年はとれない」「もう過去はいらない」を紹介したダニエル・フリードマンの<バック・シャッツもの>。メンフィス署の名刑事だったバックも、すでに89歳。前2作で.357マグナムを振るうなど活躍したのだが、…
1992年発表の本書は、以前「県民性の日本地図」「合戦の日本地図」を紹介した、明治学院大学武光誠教授の世界戦史。このころPHP文庫は<99の謎>シリーズを出版していて、そのうちの1冊である。トロイア戦争から湾岸戦争までと副題にあって、約3,200年の人…
2023年は世界で多くの選挙が行われた。そして東欧や中東での戦禍も収まらない。2024年発表の本書は、民主主義が揺らいでいる状況で未来はどうなるか、7人の知の巨人はどう考えているかのレポート。インタビュアーの大野和基氏による同様の書は、これまで何…
1988年発表の本書は、これまで「火車」や「蒲生邸事件」などを紹介した宮部みゆきの本格ミステリー。作者は本書で、日本推理サスペンス大賞を受賞している。作風の広い筆者だが、本書では一見つながらない3つの事件から話が始まり、16歳の少年守が運命に翻…
2003年発表の本書は、「King of Story Teller」フレデリック・フォーサイスが9・11テロを受けて描いた軍事スリラー。もはや大国同士がぶつかり合うことはないと思われた20世紀末、それでも地域で残虐な戦争行為は続いていた。ボスニア紛争で、ボランティア活…
2024年発表の本書は、産経新聞編集委員田村秀夫氏の中国経済「数字」解説。オールカラーのグラフ60枚を駆使して、中国経済の実態を明示しようとしている。 グラフが示しているのは「中国経済のピークって、2021~2022年だったよね」ということ。「COVID-19」…
1980年発表の本書は、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズのノンシリーズ。主人公はクレタ人のピアニスト、そして殺し屋のジョン・ミカリ。ギリシアの名家の出身だが幼くして両親を亡くし、大物の祖父に育てられた。3歳の頃からピアノに才能を発揮するが、20歳…
1907年発表の本書は、オースチン・フリーマンのデビュー作。最近のミステリーファンには知られていないかもしれないが、最初の法医学探偵ソーンダイク博士が登場した記念すべき長編である。ホームズ譚が人気を集める中、その後継者の座を争う名探偵が特に英…
2024年発表の本書は、ご存じ日本人コンサルタントの草分け大前研一氏の「AI革命考」。「第三の波」で有名なトフラー氏とは世代を超えた交流があり、氏が存命なら今の時代を「第四の波」と称するだろうと考えて発表したもの。内容は、日本政府・産業界・教育…
本書は、1988年に出版プロデューサーであるバイロン・ブライズがレイモンド・チャンドラーの生誕100年を記念して編んだフリップ・マーロウのアンソロジー。本編は24作の短編を含んでいるが、早川書房が邦訳を出版するにあたり16編に圧縮している。 巻頭作「…
1953年発表の本書は、レイモンド・チャンドラーの最高傑作として名高い作品。MWA(米国探偵作家クラブ)賞最優秀賞を獲得したフィリップ・マーロウものである。多くのファンが本書を「マーロウもので一番好き」というが、理由は一番長く(600ページ近い)て…
本書は、国際政治学者藤原帰一教授の国際情勢時評。2020年から足掛け6年かけて朝日新聞に1回/月投稿された記事を収めたものである。この連載は10年以上続いていて、筆者によれば2020年までは「リベラルな国際秩序とは程遠い不安が世界を覆った」時期だっ…
2003年発表の本書は、以前「ハンターキラー潜航せよ*1」を紹介した、ジョージ・ウォーレス&ドン・キースによる軍事スリラー。前著が面白かったので続編を探したのだが、本書は邦訳は後だが前著に先立つ物語だった。 コロンビアの革命家デ・サンチアゴは、大…
本書は、初めて紹介する英国作家ミネット・ウォルターズが、1999年と2006年に発表した中編2編を収めたもの。英国では「現代のミステリーの女王」と呼ばれていて、邦訳も創元社から10冊以上出ているのだが、ずっと縁がなかった。華麗な推理というものではな…
2014年発表の本書は、以前「日本史の内幕」を紹介した歴史家磯田道史教授の「歴史に学ぶ防災学」。日本は災害列島であり、過去にも多くの巨大災害があった。これを地形や岩石等の分析によって研究するのは理系だが、筆者は古文書によって研究するという。両…