2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧
1974年発表の本書は、久しぶりに未読作品を見つけたW・リンク&R・レビンソンの<刑事コロンボもの>。健康ブームのロサンゼルスで、アスレチック・クラブのオーナーであるユージンがバーベルの下敷きとなって死んだ。彼は自らのクラブも属するスポーツコング…
1969年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーンの犯罪小説。デビュー40周年にあたり、初めてエラリーが登場しない冒険作品(*1)を発表したものだ。舞台は田舎町ニュー・ブラッドフォード。湖畔のリゾートもある牧歌的な町で、製紙会社の経理担当が殺され、24,…
2017年発表の本書は、独立系コンサル会社を経営する篠田静夫氏の、お勧め呑み屋30店舗紹介。筆者は脱サラしてコンサルタントになり、仕事で多くのストレスを抱えた。それを癒してくれたのが「呑み屋」。僕より8歳年長で、飲み歩き50年という大ベテランであ…
本書の初版は2023年末に出版されているが、サイバーセキュリティの分野は(犯罪者にとっても)進歩が著しい。100ページほどを書き足して、2025年秋に第2版が出版された。主筆著者が交友ある山岡裕明氏であったので、出版にあたって1部送っていただいた。 …
1975年発表の本書は、昨年末2冊紹介したサイモン・クインの<ヴァチカンの殺さないスパイもの>第三作。元CIAで法皇に直接仕える異端審問官のキリーは、ローマから消えたネリー司教の後を追ってチューリッヒにやってきた。 司教のアパートには高価な調度や…
1985年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第11作。内戦は激化していて、相変わらずスティーブン王は女帝モード一派の捕虜になったまま。代わってモードに対抗していたのは、王妃の軍勢。その中間でウインチェスターのヘンリー司…
2023年発表の本書は、朝日新聞記者原真人氏の「アベノミクス検証」。金融・財政・政治・行政・歴史・思想などを専門とする13名の論客の助けを借りて、第二次安倍政権の経済政策とそれに協力した日銀の経済・財政運営がもたらしたものは何だったかを問うてい…
このDVDは、NBCネットワークで1995年に放映された「JAG:犯罪捜査官ネイビーファイル」の第一シーズン21話を収録したもの。第二シーズンからCBSに移り、2004年度のシーズン10まで続く。このスピンアウトとして企画されシーズン9と並行して放映され始めたの…
1976年発表の本書は、ビル・プロンジーニとバリー・N・マルツバーグの共作スリラー。2人の共作は「裁くのは誰か?*1」を以前紹介しているが、邦訳こそ「裁く・・・」が早いが、最初に2人が共作したのは本書である。 エセックス郡ブラッドストーンでは、この夏か…
2009年発表の本書は、軍事史作家柘植久慶の歴史上の陸上戦闘分析。似たテーマで松村劭元陸将の書も紹介しているが、そこで取り上げられなかった近代の戦いも紹介されている。特徴的なのは作者自身が戦闘の現地を実際に歩く、フィールドワークを経ての分析で…
2024年発表の本書は、以前「日本人が知らない集団的自衛権*1」を紹介した、軍事アナリスト小川和久氏の「台湾有事分析」。日米のシンクタンク等が実施したシミュレーションをいくつも紹介し、日米台の東アジアにおける(2023年当時の)戦力と、人民解放軍の…
1952年発表の本書は、これまで「愚か者の祈り」などの警察小説を紹介してきたヒラリー・ウォーのデビュー作。本格ミステリーではわき役だった警官の組織的な捜査をち密に描き、近代警察小説の嚆矢となった記念作品である。 マサチューセッツ州ボストンの大学…
本書の作者藤岡真は、大手広告会社のCMディレクター。本名のアナグラムがペンネームだという。1992年にブッラクユーモア短編「笑歩」でデビュー、筒井康隆らに評価される。1993年に初めて長編ミステリーに挑戦したのが本書で、小説新潮新人賞を受賞した。た…
1999年発表の本書は、京都大学人文科学研究所の落合弘樹氏の「明治維新行革史」。江戸時代の士農工商制度は、多くの「Tax Eater」を抱えたものだった。近代国家に生まれ変わるにあたり、税金(年貢)で生活している士族を減らすことは急務だった。しかし誰し…
1957年発表の本書は、心理探偵<ベイジル・ウィリングもの>などを紹介しているヘレン・マクロイのサイコ・サスペンス。300ページほどの長編だが、200ページを過ぎてからの急転直下の展開は見事というほかはない。さらに主人公ハリー・ディーンの結末の付け…
1930年発表の本書は、F・W・クロフツの凡人探偵<フレンチ警部もの>。以前紹介した「フレンチ警部と紫色の鎌」の次の作品にあたる。今回警部は、アイルランド島とグレート・ブリテン島の間にあるノース海峡(幅21km)を巡る陰謀に挑戦する。 ロンドンに引退し…
本書は、昨日紹介した斎藤栄「2階建て新幹線殺人旅行」とほぼ同時期(1985年)に発表された、やはり新幹線車中の殺人事件を扱ったもの。舞台や時期は同じなのに、全く違った重厚な社会派ミステリーなので、あえて今日紹介したい。 作者森村誠一はデビュー二…
今日10/14は鉄道の日。多作家斎藤栄には、いくつものシリーズやレギュラー探偵がいるが、本書に登場する江戸川警部は鉄道警察官。作者はこのキャラクターを使って、トラベルミステリーも書いた。いつかは1冊読もうと思っていたシリーズで、たまたま見つけた…
1940年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ディクスン・カーの<H・M卿もの>。前作「かくして殺人へ」でもWWⅡの始まりが事件に影を落としていたが、本書はまさにその渦中。貨客船<エドワーディック号>は、米国から軍需物資を載せて英国へ向かうのだが、その航…
2024年発表の本書は、日本の中枢で防衛を考えている人たちの<日本有事の対応論>。何作か紹介している、2人の元内閣官房副長官補、兼原信克氏と高見澤將林氏がホスト役になり、以下の4テーマに分けて、各省OBの専門家(*1)と議論した対談集である。 ■エ…
本格ミステリーが行き詰ったかに思われた20世紀末、日本では僕と同世代の若い作家たちがパズラーを続々発表し始めた。「新本格の時代」がやってきたのだ。その代表的な作家の一人が有栖川有栖。小学生の時にミステリーにはまり、中学生の時に「オランダ靴の…
1979年発表の本書は、久しぶりに見つけた才人ローレンス・ブロックの<泥棒探偵バーニイもの>の第三作。デビュー作「泥棒は選べない*1」を紹介したが、第二作はまだ見つけていない。 バーニイ・ローデンバーは、池波正太郎流にいえば「ひとりばたらきの盗人…
今日10月9日は、1983年に「ラングーン事件*1」が起きた日。2013年発表(邦訳は2021年)の本書は、韓国駐日大使でもあった羅鐘一氏の大統領暗殺未遂事件とその実行犯について調査したノンフィクション。 WWⅡの後民族分断国家となった北朝鮮と韓国だが、当初…
本書は1976年からあしかけ3年に渡って<週刊新潮>に連載された、歴史小説の大家池波正太郎の作品。二千石の旗本家の妾腹に産まれた男、徳山五兵衛(幼名権十郎)の一代記である。上中下三巻に分かれていて、合計1,700ページにも及ぶ大作。 池波作品の魅力…
革命によってドイツ帝国は倒れ、ドイツはWWⅠの敗戦国となった。政治家や将軍は表舞台を去ったが、参謀本部は残った。ワイマール共和国への移行に向けて、膨大な作業があったからである。暫定的な国軍は40万人規模と言われたが、戦勝国は10万人まで減らせと言…
「勝つときは容赦なく勝つが、より良い負け方を知らない」というのが、識者のドイツ軍に対する評価である。ドイツは統一が遅れた国家であり、中心となったのは現在の北ポーランドからベルリンに至る大きくない領土を守っていたプロイセン=ブランデンブルク…
2018年発表の本書は、デイヴィッド・ゴードンの長編第三作。作者はコロンビア大学院で英米比較文学論・クリテイティブライテイングの修士号を取り、様々な職業を経て「二流小説家」でデビューしている。長編2作と短篇集1冊を発表後、数年のブランクを経て…
2024年発表の本書は、1977年からフロリダ州で勤務した経験もある東洋大学名誉教授サム・田渕氏の日本への「喝」。米国・欧州・アジア諸国・中東/アフリカ諸国のエリートとも付き合いのある著者は、日本の病巣を外からの眼で焙り出そうとした結果が本書であ…
本書は何冊か紹介している、創元社の<ホームズのライバルもの>の短編集。中でも本書は、ミステリー史で初めての「倒叙短編集」である。犯人の側から犯行を描き、捜査陣が姦計のほころびを突いて有罪を示す(コロンボ警部や古畑任三郎の)あのパターンであ…
昨日紹介した「尖閣問題」、著者の春原氏と米国の親日派アーミテージ元国務長官、ナイ元国防次官補の鼎談も以前紹介している(*1)。御三方とも亡くなってしまったが、問題はより大きく切迫したものになっている。米中対立やトランプ2.0政権の不安定さもある…