2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧
1940年発表の本書は、不可能犯罪の巨匠ディクスン・カーの<H・M卿もの>。1920年代後半から始まる本格ミステリーの黄金期は、ちょうど映画界興隆の時期に重なる。高名な作家は、次々にハリウッドに招かれた。交流嫌いのヴァン・ダインでさえ当時の女優グレイ…
2020年(ヴァルキリーという題名で)発表された本書は、以前<ゼロ三部作*1>を紹介した安生正のバイオレンススリラー。8月末に日本で開催されるG20の時に、日本の首相を暗殺する計画と、これを防ごうとする公安警察チームの暗闘を描いたもの。 難民支援NPO…
本書は、以前「上級国民・下級国民」を紹介した橘玲氏の心理学的人間の行動分析。<週刊新潮>に2021~2022年に連載された「人間、この不都合な生き物」を、加筆修正して書籍化したものだ。前著は社会課題について「言ってはいけないこと」としてまとめたも…
本書は、以前第三集「クリスマスの朝に」を紹介した、マージェリー・アリンガムの「アルバート・キャンピオン氏の事件簿」の第二集。第一集「窓辺の老人」はまだ入手できていない。作者はクリスティのライバルとも考えられた、英国女流ミステリー作家。彼女…
2024年発表の本書は、イスラム思想研究家の飯山陽氏による「パレスチナ問題解説」。筆者は<いかりちゃんねる>などで情報発信を続けていて、2023年11月のハマスのイスラエル奇襲以降、大量のコラムを発表した。 本書はnote「飯山陽のメディアが伝えない本当…
2日連続で「そして誰もいなくなった」をモチーフにした作品を紹介したので、今日は本家のご紹介を。1939年発表の本書は、女王クリスティの最高傑作であるとともに、ミステリー界に巨大な足跡を残したもの。孤島インディアン島に集められた10人の老若男女が…
2012年発表の本書は、本歌取りが得意なグレッチェン・マクニールの<高校生版そして誰もいなくなった>。3つの高校から集められた10人が、孤島で殺人鬼に殺されていく。ホラーではあるのだが、主人公メグの青春ラブストーリーの色合いが濃い。親の持ってい…
1996年発表の本書は、乗馬と考古学が趣味という北アイルランド在住の女流作家ジョー・バニスターのミステリー。著作は20冊以上あるとのことだが、他の作品はお目にかかっていない。 ロンドン「シティ」の中心街、建造中の40階建てホテルのペントハウスに、7…
2025年発表の本書は、1982年生まれの戦争研究者2人の対談本。ロシアの専門家で戦争オタク系の小泉悠氏と、マッチョ系で東京国際大学の安全保障研究者山口亮氏である。オーストラリアで育った山口氏は、ベトナム戦争・湾岸戦争など多くの実戦に関わってきた…
1929年発表の本書は、F・W・クロフツの<フレンチ警部もの>。1920年「樽」でデビューした作者は、レギュラー探偵フレンチ警部を得て、安定した本格ミステリーを毎年発表するようになっていた。この年には米国でエラリー・クイーンもデビューし天才探偵が増え…
1984年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第九作。以前から不穏な動きを見せていた北部チェスターのレイトン伯らが叛旗を翻し、スティーブン王は苦境に陥る。王に忠誠を誓っていたシュルーズベリも軍勢を繰り出す(*1)のだが、…
1978年発表の本書は、ブルックリン生まれでニューヨークをこよなく愛する作家ピート・ハミルの「サム・ブリスコーもの」の第一作。ハードボイルド小説は、矜持を持った主人公と同時に「街」を描くのだが、マンハッタン界隈を語らせるなら最適任者のひとりが…
2024年発表の本書は、以前「人を救えない国*1」を紹介した、立教大学教授金子勝氏の日本政治批判。前著では「中央には頼れないので地域分散ネットワークで日本を救う」としていた筆者だが、事態はその後もひっ迫してきて、その根源である「2015年体制」を何…
2023年発表の本書は、大衆社会の病理を観察する作家適菜収氏の「安倍政権批判」。長期政権だったこともあり故安倍元総理の批判本は数多いが、ここまで辛辣な批判を加えた書は初めて読んだ。筆者は単に安倍氏を非難しただけではなく、小沢一郎著「日本改造計…
1980年発表の本書は、スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの<スマイリー三部作>の完結編。デビュー作「死者にかかってきた電話」以降、作者の作品によく登場した中年スパイであるジョージ・スマイリーが、ついに宿敵カーラとの決着を付ける。 三部作第一作で…
2021年発表の本書(シリーズ)は、大艦巨砲作家横山信義のWWⅡもの。何作も同じテーマで戦艦同士の砲撃戦を描いている筆者だが、毎回趣向は凝らしている。このシリーズの趣向は、日独伊三国同盟が史実より早く締結され、しかもそれが対ソ連に制限されなかった…
1939年発表の本書は、思想家大川周明氏が遺した<大日本帝国が見るべき日本の歴史>。著者は5・15事件に連座したとして収監され、釈放されたのちに本書を著している。日中戦争から太平洋戦争に至る精神的背景になった書と見られ、著者はA級戦犯に指定された…
1981年「悪魔の飽食」を、森村誠一が<赤旗>に連載する形で発表するや、国内はもとより海外からも多数の反響があった。悪名高い関東軍731部隊(通称:石井部隊)の所業については、関わった人達が「墓場まで持っていく」決意で口を開いていなかった。しかし…
1939年の5月から9月にかけて、満州北西部の国境地帯で、日ソ両軍が激突したのが「ノモンハン事変」。まさにWWⅡ直前の紛争であり、近代戦にとって多くの示唆を得られた戦いだったはずだ。しかし(少なくとも)日本陸軍は学んだことを、後日に活かせなかった…
池波正太郎「鬼平犯科帳」は、単行本が19巻+1、文庫版が24巻+1(*1)。文庫版で第14巻までは短編集だが、15巻目(単行本では10巻目)の本書が初の長編である。文庫版の出版は1985年だった。 正月明け、長谷川平蔵は東海道筋将監橋のたもとで、黒覆面の大…
1990年発表の本書は、アンドリュー・ヴァクスの<前科27犯の探偵バークもの>の第五作。前作「ハード・キャンディ」で最強の敵ウェズリィを倒し(正確には自滅させ)たバークだが、ウェズリィは背後霊のようにバークに憑りついている。何かの折に、ふと彼の…
この言葉が、全ての政治家に対する筆者の言いたいことである。2024年岸田政権下で緊急出版された本書は、多数の著書がある憲政史研究家倉山満氏の「政治改革指針」。タイトルには「自民党・・・」とあるが、立憲民主党(当時は泉代表)ら野党も含めた、国会議員…
1930年発表の本書は、「ピーター・ウイムジー卿もの」で知られるドロシー・L・セイヤーズのノンシリーズ。全編は登場人物が親戚や愛人などに宛てた手紙と、何人かの供述、および新聞記事で成り立っている。主要な登場人物は、極めて少ない。 ジョージ・ハリソ…
2016年発表の本書は、米国現副大統領J・D・ヴァンス、31歳の時の「回顧録」。トランプ現象を読み解く書としてベストセラーになり、2020年には映画化もされている。アイルランド・スコットランド系移民の子孫である筆者は、アパラチア山脈の街ジャクソンとラス…
1939年発表の本書は、巨匠エラリー・クイーン初期最後の作品。この後3年ほどブランクがあり、中期の傑作「災厄の町」に続く。エラリーは、父リチャードの警官仲間だった男の息子ボー・ランメルと探偵社を設立することになった。実際の探偵業はボーがやり、…
2022年発表の本書は、日本国際交流センター執行理事である毛受敏浩氏の「移民受け入れのススメ」。1960年代には日本人の平均年齢は30歳以下だったが、2022年現在48.6歳。日本社会の衰退を防ぐため、移民は必要不可欠だと筆者は主張する。 人口減少社会になる…
軽妙な短編の名手で、以前「退職刑事」などを紹介した作家都筑道夫。ミステリーのジャンルに留まらない、幅広い作品がある。SFあり、ホラーありなのだが、1986年発表の本書は近代ホラーの短編集。設定として、週末ごとに集い怪奇譚を披露しあう「深夜倶楽部…
1979年発表の本書は、昨日紹介したブライアン・キャスリンの「無頼船長トラップ」の続編。発表年では5年しか経っていないのだが、物語中の時間は30年が経っていて、東西冷戦の最中。第一次世界大戦から海で暴れているトラップ船長だが、前作では第二次世界…
1974年発表の本書は、海洋冒険作家ブライアン・キャスリンの第二次世界大戦もの。「海の豹を撃沈せよ」が有名だが、まだ入手できていない。海の男の戦記物の主人公は、例えダーティヒーローであっても何らかの矜持を持って任務に臨む。 ・女は殺さない ・契…
35年前の今日(1990.8.2)は、イラクのサダム・フセインがクウェートに侵攻した日。1996年発表の本書は、以前「ベトナム戦争」を紹介した三野正洋氏らのフォークランド紛争/湾岸戦争における兵器ハンドブック。 1982年4月、アルゼンチン海軍は南大西洋の英…