2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧
1986年発表の本書は、女流作家フェイ・ケラーマンのデビュー作。ロサンゼルスに近い正統派ユダヤ教コミュニティを描いて、マガウティ賞の最優秀新人賞に輝いた作品である。原題の「The Ritual Bath」とは、身を清めるための特殊な水風呂のこと。例えば、夫婦…
2025年発表の本書は、メディア研究の著書が多いジャーナリスト下山進氏の「旧メディア生き残り策」。2021年から「サンデー毎日」などに2ページのコラムを書いてきたものから35篇を選び、それを書下ろし原稿でつなげる形式で編集したものだ。 2017年までの10…
1999年発表の本書は、すでに<スペンサーもの>を紹介しつくしたロバート・B・パーカーの別シリーズ。やはりボストンを舞台にした、私立探偵ものだ。主人公サニー・ランドルは、30歳そこそこのバツイチ女。元夫のリッチーも彼女も警官だった。彼女の父親も引退…
1992年発表の本書は、アラスカ在住の形成外科医リチャード・パリーの第二作。デビュー作「アイスウォリアー」は入手できていない。遺伝子操作されたインフルエンザウイルスを使って、イスラムテロリストが米国に攻撃をかける話である。300人近い乗客乗員が乗…
2023年発表の本書は、ノンフィクション作家河合香織氏の「不老不死研究最前線レポート」。不老不死は古来為政者の希望だが、Googleの共同創業者が「寿命を100年伸ばす研究」に15億ドルを投資したニュースもあった。 ヒトはなぜ老いるかというと、不要なタン…
2004年発表の本書は、以前「へんな兵器」「WWⅡ秘話」を紹介した軍事史ライター広田厚司氏の「不可解・奇妙・偶然」なエピソード集。戦争は常にカオスであり、信じがたいことが起きる。筆者はWWⅡ戦史を専門に雑誌<丸>などに寄稿していて、単独では物語にな…
2022年発表の本書は、MUFGで30年以上勤務し主にシステム関連を担当した静岡大学遠藤正之教授の「銀行DX論」。30年前にビル・ゲイツは「銀行機能は必要だが、今の銀行は必要ない」と金融業界の改革を促したとされる。 店舗を設け、バックヤードで紙幣を含む大…
蒲田のBookoffで見つけた本書が、マージェリー・アリンガムの<キャンピオン氏の事件簿:第一集>。これまで日本で再編出版された3冊の短編集のうち、2冊を紹介している。探偵役のアルバート・キャンピオンは、1900年生まれ。1929年の「The Crime at Black…
1996年発表の本書は、20年余り銃器関連の書籍を書いてきた専門家クレイ・ハーヴェイが初めて書いたアクション小説。多種多様な銃器が登場し、その使い方・特徴・留意点などは詳細だ。ジャック・ヒギンズやロバート・B・パーカーが賛辞を寄せる一方、「こんなひ…
2023年発表の本書は、評論家佐高信氏とノンフィクション作家森功氏の対談集。日本の怪物として、 ・カルト宗教、統一教会 ・闇の帝王、許永中 ・国商、葛西敬之 ・ロッキード事件、児玉誉士夫と小佐野賢治 ・総利権化の権化、竹中平蔵(本書の紹介のママです…
1966年発表の本書は、読売新聞の特派員から作家に転じた三好徹のスパイスリラー。日本のミステリーで欧米に後れを取るとしたら、この分野だろう。太平洋戦争前は当然のこと、戦後になってもスパイものはあまり書かれなかった。しかし作者は、特派員だった経…
本書は女流作家サンドラ・スコペトーネが、ジャック・アーリー名義で1984年に発表したデビュー作。米国私立探偵作家協会(PWA)賞の新人賞を獲得した作品である。ハードボイルド私立探偵には、その街の影が色濃い。主人公フォーチューン・ファネリはイタリア…
2024年発表の本書は、佐々木孝博元海将補の「軍艦の歴史」。筆者は防衛大学校時代に師事した野村實氏の「海戦史に学ぶ*1」を継ぐものとして本書を書いたと思われる。1852年ペリー来航以来、海に支配者がどう変遷してきたかの歴史である。 WWⅡまでの軍艦につ…
今日(11/17)は将棋の日。東大将棋部卒のミステリー作家斎藤栄が、生涯唯一書いた歴史小説は、やはり将棋に関するもの。ある意味作者のライフワークのような作品で、1977年から16年かけて書き継がれたのが「棋聖忍者天野宗歩シリーズ」。本書は全8巻の最初…
本書(1965年発表)の作者ハリー・クレッシングのことは、ペンネームだという以上は何も分かっていない。他にもう1作あることはあるようだが、全く謎めいた作者である。 一人の背の高い男がある日、自転車に乗ってコブの町にやってきた。この街も架空のもの…
2023年発表の本書は、中東調査会研究主幹青木健太氏の<アフガニスタンの今>。アケメネス朝ペルシア(前6世紀)から、アレクサンダー大王の東征など幾多の歴史に登場する「文明の十字路」なのだが、反面「帝国の墓場*1」とも呼ばれるのがこの地。 1973年ザ…
2015年発表の本書は、ミルウォーキー在住の作家ニコラス・ペトリのデビュー作。国際スリラー作家協会賞など、複数の賞を獲得した作品である。以前紹介した「NCIS」のビデオでも再三イラクやアフガンからの帰還兵の悲劇が描かれる(ギブス自身帰還兵である)…
本書は<Hard Case Crime>というペイパーバックシリーズの1冊として2004年に発表され、翌年の米国探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞を受賞した作品。作者のドミニク・スタンズベリーは、人生の暗黒面・呪われた面を書くことに長けたサスペンス作家で…
僕も20歳前後まではそうだったのだが、ミステリーマニアとして「Best○○」という言葉には弱い。その中に自分が読んでいない本がどれだけあるか、リストから消込みをして本屋通いをすることになる。 2012年発表の本書は、文春文庫が日本推理作家協会員やマニア…
2024年発表の本書は、朝日新聞出身のウェブメディア運営者鮫島浩氏の「政治とカネ論」。主張ポイントは「民主主義を守り(有権者が)政治を自分事化するために、カネの流れに着目しよう」ということ。具体的には、政治献金などしていない一般市民も税金とい…
1950年発表の本書は、技巧の名手ヘレン・マクロイの<ベイジル・ウィリング博士もの>。コネチカット州のブレアトン女子学院に勤めて5週間にもならない美術教師のフォスティーナ・クレイルは、突然校長から解雇を告げられる。しばらく前から、学院内でよそ…
本書は、歴史小説の大家池波正太郎の戦国時代もの。以前作者の文庫化初作品集である「元禄一刀流」を紹介したが、その中に収められていた「新陰流の創始者上泉伊勢守」の中編をベースに、800ページの大作に仕上げたものだ。 「活人剣」新陰流の創始者 - 新城…
1949年発表の本書は、女王アガサ・クリスティのノンシリーズ。レギュラー探偵は登場せず、警視庁副総監ヘイワードの息子チャールズが私として登場する。ノンシリーズゆえ買う気になれなかったので、ほぼ最後の未読女王作品となった。 WWⅡで長く英国を離れて…
2024年発表の本書は、健康社会学者である河合薫氏の日本の労働実態レポート。健康社会学とは、人は環境で作られ、環境を変えることもできる相互作用に着目し、人の幸福感や生きる力を研究するもの。 本来社会は、頑張ったら報われ、助けてと声を上げられる人…
2021年発表の本書は、ベテランジャーナリスト岸宣仁氏が、長年の大蔵~財務省人脈を使って財務省の人事から見る歴史を綴ったもの。作中人物のほとんどに('xx)と付記があるのは、入省年次の意味。大蔵大臣として登場する福田・大平元総理などにもその付記が…
1986年発表の本書は、エリス・ピーターズの<修道士カドフェルもの>の第12作。前作「秘跡」は、愛の物語だったが凶悪犯罪はなかったので、ミステリーの線からは外れかけていた。しかし本書でカドフェルは、正々堂々の司祭殺しに挑む。 スティーブン王が捕虜…
2024年発表の本書は、京都大学大学院教授諸富徹氏(経済学)の税と社会保障改革に関する提言書。増え続ける社会保障の財源を、社会保険料に求めれば現役世代に、消費税に求めれば低所得層に大きな負担を強いる。第三の道はないのかというのがテーマ。 日本政…
2002年発表の本書は、日本の近現代史が専門の一橋大吉田裕教授の「天皇の軍隊の功罪」。先月落合弘樹著「秩禄処分」で、明治維新における武士(という軍事専門家)のリストラ次第を紹介したが、武士の穴を埋めたのが1873年に発布された徴兵制である。 急激な…
誰もその名を知らない人はない、怪物フランケンシュタイン。いろいろな怪奇小説や映画、果てはアニメにまで登場しながら、その誕生については僕も知らなかった。それが本書、1812年発表のメアリ・シェリーの作品である。なんとナポレオン時代のものだったか…
2008年発表の本書は、アジア近代史の著書が多い元NHK記者宮城大蔵氏の、インドネシア周辺の戦後史。旧宗主国のオランダやマレーシア等を支配していた英国、ベトナム戦争に介入した米国に加え、一時期占領統治した日本が、戦後どのようにこの地域の政治に関わ…