新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

精神分析医とのチェスゲーム

 1984年発表の本書は、「危険な犯罪小説家」と帯で紹介されるジェイムズ・エルロイのサイコ・サスペンス。「血まみれの月」でデビューしたロス市警ハリウッド署のロイド・ホプキンス部長刑事の第二作だというが、前作は手に入っていない。

 

 危険な刑事と評判のホプキンズは、幼いころのトラウマを抱えその反動か、犯罪者には容赦ない。署内でも孤立気味だが、ペルツ警部だけは庇ってくれる。久々に警部の呼び出しがあって、ホプキンズは3週間前に失踪した警官を探すよう言われる。34歳のハーゾク巡査は危険な囮捜査を何度もこなし、表彰されたこともある優秀な警官。自宅を捜索すると、すべての指紋がぬぐい取られていた。

 

        

 

 一方酒屋に強盗が入り、店主ら3人が古い.41口径で射殺された。犯人は冷酷な性格で、銃の腕も確かだ。2つの事件を追うホプキンズは、精神科医ヴィランドに行きつく。彼は多くの患者の信頼を集めていて、高級娼婦・株式仲買人・女子工員などトラウマを抱えた人が通ってくる。実は彼の助手ゴフが、強盗殺人犯。しかもゴフ自身、ハヴィランドの治療を受けないと、偏頭痛がひどくなる症状を抱えていた。

 

 患者たちのトラウマを聞き出し、治療をしているように見えるハヴィランドだが、実は犯罪チェスゲームの手駒として操っているのだ。ハーゾク巡査は、なぜかこの精神科医の秘密に気付いたらしい。また別の警官も、ハヴィランドの悪事を知って強請ろうとする。敵も手駒も次々に殺して、ハヴィランドは最後にホプキンズと対峙する。

 

 人のトラウマ、深層心理にまで分け入ってその人物を操るハヴィランドも恐ろしいが、個々人のトラウマも陰惨なものだ。確かに帯にあるように「鳥肌がたつ」。ルース・レンデルともジャック・カーリイとも違う恐ろしさである。

 

 作者は幼くして両親を亡くし、ほとんど教育を受けずに職歴を積み作家デビューしたとあります。壊れた家庭で育った子供の代表格で、その体験からこのような作風が生れたのだと思います。ホプキンズものではないですが、何作か後年の作品を買ってあります。いずれご紹介できるでしょう。