新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

ジャーナリスト探偵ブリスコー登場

 1978年発表の本書は、ブルックリン生まれでニューヨークをこよなく愛する作家ピート・ハミルの「サム・ブリスコーもの」の第一作。ハードボイルド小説は、矜持を持った主人公と同時に「街」を描くのだが、マンハッタン界隈を語らせるなら最適任者のひとりが作者である。探偵役ブリスコー同様、作者もジャーナリスト出身で「ニューヨーク・スケッチブック」というコラムを書籍化した作品(1980年)でも注目されている。

 

 舞台はクリスマスが近く、雪が降り積もる12月。38歳のジャーナリストであるブリスコーは、6年前に別れた恋人アンから「会いたい」との電話を受ける。電話では話せない重大な要件だと言うので店を指定して待っていたが、彼女は現れなかった。ブルックリン橋で事故を起こして、死んでしまったのだ。雪が降っていて、事故死と思われたがブリスコーは殺されたのではと考える。

 

        

 

 アンの身辺を洗ってみると、数ヵ月前メキシコで航空機事故で死んだ金満銀行家ペペ・フエンティスとアンが懇ろだったことが分かった。そして、アンの同居人だったモヤという女が、ペペの前妻だったことも。モヤに会おうとしたブリスコーだが、モヤはメキシコへと逃げてしまった。ブリスコーは凍てつくマンハッタンから、陽光降り注ぐメキシコシティまで、モヤを追いかける。

 

 ここもマンハッタン以上に危険なところ、ブリスコーは現地のUP通信の記者マレイから、フエンティス一家の不穏な内情や銀行業としてのいかがわしさを聞く。ペペの父親ドン・ルイス、ペペの弟ミゲールとも会うのだが、なかなか真実には到達しない。そんな中、ブリスコーは街中でモヤと一緒にいる男の顔を見た・・・。

 

 ラストシーンはハリケーンの中での銃撃戦、なかなかの迫力でした。ちょっとエロチックなシーンもありましたが、まずは正統派のハードボイルドでした。