新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

「例外主義」を捨てた米国と若者

 2023年発表の本書は、昨今ニュース番組にも出演の多い同志社大学三牧聖子教授(米国政治外交史)の米国若者の政治指向論。まだバイデン政権だったころで、来年の大統領選挙でZ世代(1997~2012年生まれ)がどう動くかを分析したものだ。

 

 一世代前(ミレニアム世代)と彼らが違うのは、9・11に始まる「テロとの闘い」の記憶がないこと、米国だけは例外だとする「例外主義」を意識していないことだとある。9・11テロは、平和だった米国本土で3,000人程の人が亡くなる大惨事。アフガン侵攻を始めても、ブッシュ政権の支持率は9割近かった。しかしその後長引く過程で、各政権のダブルスタンダードが顕著になり米国は孤立してゆく。

 

        

 

 例えば国内の9・11被災者には多額の補償を行う一方、アフガニスタン等で被害を受けた市民には何の補償もしない。偶然西洋人に犠牲者が出ると、当時のオバマ大統領は直ちに遺憾の意を表明し、作戦行動なども公表して改善に努めると約束した。

 

 米国市民の間にはダブルスタンダード以外にも、市民の税金が何故他国への攻撃に使われるのかの疑問が湧く。米国国内の格差はひどくなり、市民の50%を占める貧困層の富は全部合わせても国中の2%に過ぎない。米国は経済でも軍事でも唯一の存在で、世界で何をしてもいいという「例外主義」に疑問符が付いた。2016年の大統領選挙で、トランプ候補を勝たせた理由の一つが「例外主義」を捨てたこと。Z世代はこのころから政治に目覚めてゆく。

 

 対中国でも、ミレニアム世代までは米国が優位だった時代の記憶がある。Z世代では中国は立派な大国で、TikTokなどの優れたサービスも提供してくれる対等の国。あるがままを受け入れる現実主義でもある。

 

 しかし彼らの多くは親の世代よりも貧困で、貧困が固定化された社会に絶望している。そこでエリートたちが牛耳る民主党中道ではなく、サンダース上院議員に代表される民主党左派を支持する傾向が強い。

 

 トランプ2.0政権がここまで無茶をしなくても、民主党左派が伸長する理由がよく分かりました。さて、11月の中間選挙はどうなるのでしょうか?