2014年発表の本書は、以前「日本史の内幕」を紹介した歴史家磯田道史教授の「歴史に学ぶ防災学」。日本は災害列島であり、過去にも多くの巨大災害があった。これを地形や岩石等の分析によって研究するのは理系だが、筆者は古文書によって研究するという。両者を併せることで、分離融合の「歴史防災学」が確立できるということ。
16世紀から現代まで、6つの大災害が取り上げられ、歴史に影響を及ぼしたことがレポートされる。最初のエピソードは、天正地震(1586年)と伏見地震(1596年)。近畿地方を襲ったこの2つの災害が、豊臣政権を終わらせ徳川幕府につながったという。
秀吉は「小牧・長久手の戦い」で家康に敗れ、復讐を誓っていた。家康の腹心石川数正を引き抜いたり、浜松攻めのために大垣に巨大な補給基地を築いた。さて10万ほどの軍勢を集めようとしたところで、地震に見舞われ補給基地が壊滅した。家康(精々4万の兵力)は命拾いをしたのだ。

また朝鮮攻めをしていて、明国特使を迎えるために絢爛豪華な伏見城を作り、美女を集めていたところに再度大地震がきた。伏見城は倒壊し、美女の多くは死んだ。明国との秀吉に有利な和議は、夢と消えた。歴史に大きな影響を与えた、おそらく最大の自然災害だったろう。
このほか、富士山の噴火(1707年)では、地震(東南海地震?)と津波もやってきた。筆者はこの災害を記した古文書を探すために、浜松に転居してきたという。古文書を読み込んでいくと、静岡県内に高台避難の伝承や、命を守る高台を人工的に作った跡が見つかった。古来神社は、災害時の避難所だともいわれる。地震や津波が来ても、命だけは守れるところとして信仰を集めてきた可能性もある。
その地域で住民の命を守るために、少ない資源でもできることがあるというのが「歴史防災学」の教え。東日本大震災のおり、それに救われた茨城県の町もあったそうです。文理融合の学問、期待できますね。