新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

サセックスの一つ目巨人

 1985年発表の本書は、先月「クロノス計画」を紹介したW・L・デアンドリアのスパイスリラー、「クロノス計画」の続編である。前作でクリフォード・ドリスコルと名乗っていた主人公は、ジェフリィ・ベルマンとして英国にやってきた。ドリスコルは死んだことになっていたし、諜報員ベルマンは敵の手に掛かって殺されていた。

 

 英国の諜報機関<課>では、引退した創業者ルイス卿が最終報告を出す直前に行方不明になった。何者かに誘拐されたらしい。彼の報告がないと、英米関係に亀裂が生じると、ジェフリィは父親でもある<下院議員>の命令でルイス卿探しにやってきたのだ。空港でさっそく待ち伏せを受けたジェフリィは、<課>の女フェリシティに助けられる。米国側か英国側か、情報漏れがあるようだ。ルイス卿の行き先はサセックス州のブリストルと思われたが、そこでは「一つ目巨人」とあだ名される犯人による連続殺人事件が起きていた。

 

        

 

 ルイス卿を誘拐したのは、前作にも登場したソ連の息のかかったテロリストであるレオ。薬物を投与されながらも卿もさすがにスパイ、レオが不在のうちに相棒の女を殺して脱出する。しかし自らの誘拐の手際が良すぎたことから、自分の行動予定をリークした者が<課>にいるのではと疑い、身を隠すことにした。

 

 レオを操っていたのはKGBの高官ブラーニンで、レオに早く卿の口を割り引き渡せと迫る。卿を逃がしてしまったレオは、まだ卿を確保していると見せかけ、手下に命じて必死に行方を探らせる。一方サセックス警察は、連続殺人事件の現場から得た不完全な指紋から、有力容疑者を割り出した。それはルイス卿。

 

 卿とは面識も(恐らく確執も)あった<下院議員>も、口を挟むようになった。<課>、卿、KGB、レオたち、ジェフリィらが互いを信用しないで動き、絡み合う。

 

 近代パズラーの名手が、たどり着いたのが複雑なスパイスリラーというのは興味深いです。ただ全編に流れるルイス・キャロルの「スナーク狩り」という書のトーンが分からないので、難解なところがありました。あと1冊続編を買ってあるので、来月ご紹介します。