新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

遥かなり欧州大陸

 「コロナ禍」のおかげで、世界中の国際線のフライトは90%近く運休・減便になってしまった。海外旅行が大好きな僕たち夫婦も、1月のローマ旅行以降海外に出掛けることができない。僕らは結婚してしばらくは旅行会社のツアーを利用していたのだが、慣れてくると自分でフライトやホテルを予約して「自分たちだけの旅行」をするようになった。

 

 そんな時、ひとつの参考書となったのが「トーマス・クックの時刻表」。欧州各国の鉄道事情や利用の留意点が紹介されているし、巡りたい都市の位置関係をつかむこともできる。例えばTGVならブリュッセルとパリの間はおおむね2時間、東京・京都間くらいの位置関係だということが分かる。

 

 旅行でも出張でも、現地での移動にあたって大体の感覚をつかむにはベストな参考書である。メインの空港と市街地への交通は、フライトの到着・出発時間とホテルのチェックイン・アウトの計画を立てるのに重要だ。そんな情報もここにはある。

 

 この時刻表は2013年に買ったのだが、古くても上記のような感覚をつかむのには十分役に立ってくれた。そんなトーマス・クック社だが、昨年秋倒産してしまった。同社のルーツは、1841年までさかのぼる。設立者のトーマス・クックはパブテスト派の伝道師。禁酒運動に熱心で、運動のイベントに多くの信者を送り込もうと旅行業のようなことを始めたのが始まりである。

 

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 最初は英国の中だけのガイドだったのだが、英国から欧州大陸への旅行も紹介するようになり、1872年には「世界一周旅行」を始めている。2007年には旅行業・航空業の近代的な企業としてロンドン市場に上場、最盛期22,000人の従業員を抱える大企業となっていた。しかし(これは僕の推測だが)インターネット上のいろいろな旅行サービスに押されて業績が悪くなり、ついに2019年に破産申請することになったようだ。

 

 学生の頃、JTBの国内時刻表に凝っていた時代もあって、インターネットサービスが発達してきても一冊は紙ベースの時刻表があるのは嬉しいものだ。いつ頃になったら欧州旅行ができるかわかりませんが、その時にはまたこの本を開いてみることでしょう。もう新しい冊子は発売されないことですし。