新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

偉大な、神秘に触れる男

 1994年発表の本書は、以前SFホラー「アイアム・レジェンド」と短篇集「運命のボタン」を紹介した、奇抜なストーリーテラーであるリチャード・マシスンの奇術ミステリー。回想シーン以外は、全て「偉大なるデラコート~神秘に触れる男」の異名をとった奇術師デラコート父子の奇術部屋(6m✕9m)で物語が進む。

 

 父親のエミール・デラコートは14年前、脳卒中の発作を起こして植物状態になるまでは、古風だが実力ある奇術師だった。この部屋にある多くの仕掛け(*1)も、多くは彼が考案したもの。今の彼は、目も見え、耳も聞こえるのだが、身動きはもちろん意志を示すこと(*2)もできない。着替えや食事、睡眠以外の時は、この部屋を眺められる場所に車椅子を置いて座っているだけ。

 

        

 

 跡を継いだのが息子のマックス・デラコート。新しいトリックを考えることを含めて、父親に勝るとも劣らない奇術師として名声を高めている。助手を務めるのは2度目の妻のカサンドラ、金髪・豊満な美女だ。さらにカサンドラの弟ブライアンも助手補佐的役割。これにマネージャのハリーが加わり、デラコートの興行を支えている。

 

 しかしこのところマックスの体調が悪く、奇術をしくじることもある。さらにカサンドラがハリーと不倫し、マックスの後釜に座ろうと思っているらしい。ブライアンもそれに加担して・・・。

 

 彼らの企みを察知したマックスは、父親の目の間で彼らを奇術の罠にはめて、復讐を果たそうとする。カサンドラらも仕掛けをしていて、目まぐるしいトリックの攻防が起きる。駆け付けた保安官グローヴァーも加わって、5人の派手な絡み合いが続く。エミールの(登場人物には聞こえない)独白も、雰囲気を盛り上げる。

 

 帯にあるように後半はどんでん返しの連続、誰が殺されたのか?どこに死体があるのか?他人になりすました奴いるのか?など奇術の技がからんで、目が回るようなストーリー展開でした。面白いことは面白いのですが、これってどう分類したらいいのでしょうか?

 

*1:隠し扉、ギロチン、ホログラム地球儀、棺、決闘用ピストル、吹き矢、中世の鎧等々

*2:まばたきでモールス信号を送ることはできただろうが、本書にはその記述はない