2023年発表の本書は、2022年に「世界の知が読み解くコロナ後の世界」をテーマに、朝日新聞社が主催した<朝日地球会議>の議論紹介。4人の知の巨人のほか、日本の識者4名の対談も掲載されている
前半は民主主義について、暗い歴史学者エマニュエル・トッド氏と明るい哲学者マルクス・ガブリエル氏が登壇した。トッド氏は、「COVID-19」はそれ以前から進行していた危機を明示したという。危機とは、次のようなこと。
・民主主義は、制度は残っているが精神は失われていた
・これは改善の見通しはなく、新しい全体主義が蔓延している
・超個人主義と社会の細分化が、これを後押しした
ガブリエル氏は、やはりパンデミックは国民国家の存在を示したと言い、SNSは民主主義の敵だとする。しかし一方テクノロジーの未来には希望を見出している。
・危機の時代だからこそ「新しい啓蒙」は必要
・人類史上最大の民主主義国インドに期待する
・デジタル技術は生きた人間に敵わず、技術も変容してくれる

後半は資本主義について、経済学者で思想家のジャック・アタリ氏と不平等の研究者ブランコ・ミラノビッチ氏が登壇した。アタリ氏はパンデミック対策では民主主義国が勝利したと言いながら、資本主義は変容すべきだと語る。
・「死の経済」が広がっている。いまこそ「命の経済」に舵を切る時
・「死の経済」企業には補助金を出してはいけないし、個人は「利他主義」を学ぶべし
・グローバル化は一旦後退するが、90億人が生きるためには進めざるを得ない
ミラノビッチ氏は、2つの資本主義(*1)があるとして、さまざまな不平等について語った。
・先進国中間層の所得は1%程度の伸び、途上国や富裕層は20%も伸びた
・日本は、2つの資本主義の特徴を併せ持っている。世界経済に寄与できるはず
・米国の時代が終わった今、アフリカの成長がカギを握っている
いずれにせよ重要なのは「教育」ということでした。各国政府や有権者は、これらの声に耳を傾けられるでしょうか?
*1:リベラル能力資本主義と政治的資本主義