1979年発表の本書は、昨日紹介したブライアン・キャスリンの「無頼船長トラップ」の続編。発表年では5年しか経っていないのだが、物語中の時間は30年が経っていて、東西冷戦の最中。第一次世界大戦から海で暴れているトラップ船長だが、前作では第二次世界大戦の地中海で破天荒な「活躍」を見せた。その後も密輸その他カネになることならなんでもする、海のヤクザを続けている。
そのトラップが、エジプトの港町で誘拐されてしまった。命が惜しければ言うことを聞けとアラブ人に脅され、貨物船<カマラン号>に乗り組む羽目に。この船は建設機械などをスペインのマラガに運ぶのだが、アラブ人たちは途中で船を沈め、荷をそっくりいただいて保険金も手に入れようとしていた。

ところがその積荷は、どうやら建設機械などではないらしい。中国人のグループもその積荷を狙っていて、それを察知した英国情報部が動き出す。情報部の「提督」が選んだ工作員は、かつてトラップらと任務をこなしたミラー元大尉だった。
実直なミラーは、戦後は普通の船長職についていたのだが、夜な夜な狂気じみたトラップの目つきや、イタチ顔のスコットランド人甲板員ウイリイのカミソリを夢に見ていた。ミラーはいやいやながら、悪夢を振り払えるかもと考えて任務を引き受けエジプトでトラップ達に合流する。
何が本当の狙いなのか分からないアラブ人、映画の話をしているうちはいいがすぐキレる中国人、もちろん吝嗇・傲慢なトラップらも加わって、前作以上のスラップスティックな物語が展開する。隠し持った無線機で「提督」の指示をあおいでいたミラーも最後にはキレて、英国も欲しがっていた積荷を海の底に沈めようとする。
物騒な積荷が西側と対峙するリビアの独裁者に届いてしまうかが焦点なのだが、本来の目的も忘れてしまうくらいのドタバタ劇の連続でした。うーん、こんな英国の海の男の冒険譚もあったのですね。