新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

電脳社会の未来、超入門編

 2022年発表の本書は、テクニカル系ジャーナリスト小林雅一氏の「量子コンピュータQuantum Computer:QC)超入門編」。これにかかると従来の暗号が解けてしまって、社会システム(例えば仮想通貨)が瓦解すると怖れられているのがQC。通常1ビットは0か1かの値をとるのだが、量子ビットは同時にどちらもとれる。Nビットは2のN乗の数値をとり得るのだが、N量子ビットは2のN乗のすべての値をとれるのだ。

 

 4ケタの暗証番号を通常のコンピュータで総当たりするには1万回の試技が要るが、QCなら1試技で全部を当てはめることができる。だから桁違いの計算速度が期待できるのだ。この同時にどちらの数値もとれる量子は、いろいろな方法で作り出すことができる。

 

・極低温下の超伝導量子ビット

・イオンにレーザーを当てるイオン・トラップ量子ビット

・光を偏光させて作る光量子(光子)ビット

 

        

 

 問題となるのは、状態が安定しない量子ビットをどれだけ長く生存させられるかである。またビットは誤ることもあるので、これを検知し自動補正する技術も必要になる。いずれも難題だが、21世紀になって各国研究開発を進めていて、先行しているのはIBMGoogleだが、中国企業も猛追している。Googleは「QCの実用化は2029年」と予言している。

 

 筆者はQCを活用するアプリケーションを以下のように例示している。

 

・自動車分野 信号制御し渋滞緩和、製造のためのサプライチェーンの整理

・金融分野 投資ビジネスの競争優位性を高める

・化学、製薬分野 最適な材料の組み合わせを見出す時間の短縮

・物流分野 配達ルートや輸送手段の最適化

 

 だとし、AIについても機械学習に計り知れない可能性があるとしている。問題はやはり軍事転用されることと、従来の暗号が危機に晒されること。AIがそうではなかったように、技術が急速に進歩する前に「安全に使う枠組み」を社会で確立するべしと筆者は言う。それは大変難しいこと(確立してもそれを破るヤカラは必ず出てくる)と思うのですが・・・。