新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

神学博士の2人の美しい娘

 1924年発表の本書は、文豪ながら本格ミステリーを多く遺したイーデン・フィルポッツが、ハリントン・ヘキスト名義で発表したロマンスミステリー。

 

 壊れた家庭の出身ながら、富豪である伯父の助けで医師になったノートン青年は、海辺を散歩していて美しい姉妹に出会った。父親ヘンリー・コートライトは大執事(神学博士)で、姉マイラはテニスの有力選手、妹ダイアナ(あだ名はコマドリ:ロビン)は女優の卵である。2人はよく似ているが、ダイアナの方がひときわ目を引いた。

 

 2人には英国でも指折りのテニス選手ベンジャミン卿が好意を寄せていて、ダイアナとの仲が噂されていた。しかしノートンは(身分もわきまえず)ダイアナに一目ぼれし、求婚してしまう。怒ったのはノートンの伯父で、すでにノートンの結婚相手を決めていて全財産を譲る気だったのだ。

 

        

 

 それでもノートンは強引にダイアナと結婚、夢破れたベンジャミン卿はマイラと夫婦になった。しかし伯父の援助が無くなったノートンたちは生活が苦しく、夫婦げんかが絶えなくなる。さらにダイアナの体調が悪くなり、ノートンが家を離れているうちに亡くなってしまった。葬儀も済んで1年半後、ダイアナが父親に当てた手紙が見つかり「ノートンに毒殺される」とあった。死体を検視すると致死量のヒ素が見つかり、警察はノートンを殺人容疑で逮捕した。

 

 知らせを受けたノートンの友人で私立探偵のニックは、ノートンは無実だと信じて事件を洗いなおす。容疑者は3人、ダイアナが死んだとき傍にいて毒を盛ることができた、ベンジャミン卿・マイラ・かかりつけ医のファルコナーだ。

 

 S・S・ヴァン・ダインがフィルポッツ名義の4作とヘキスト名義の4作をほめたことから、日本でも人気が高いのですが、本国では「古いタイプのミステリー」をあまり顧みられていないと解説にありました。確かにそういう面はあって、意外な結末こそあるものの、中盤は三角関係のもつればかりが目立ちサスペンス横溢とはいきません。それでもようやく読めた「名作」には感謝ですよ。