新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

3人の作られた証人

 1994年発表の本書は、おなじみ津村秀介の「伸介&美保もの」。作者が2000年に急逝(享年66歳)してしまい、好調に積み上げられてきたシリーズだが、本書は終盤の作品となってしまった。このシリーズの特徴は、

 

・主として日本の公共交通機関を使ったアリバイ工作

・トラベルミステリーとして、地方の魅力を紹介

・作者の週刊誌記者としての経験を活かした事件背景

 

 で、気軽に読んで楽しめる内容になっている。その一方、犯人がいかにも簡単に人が殺せるという点や、必ずと言っていいほど犯人特定につながる指紋が出てくることは、リアリティを損ねているような気もする。本書でも犯人は病身の老婆はともかく、まだ25歳の健康な娘をナイフの一突きで殺して、凶器も現場に残している。凶器からは指紋は出なかったのだが、他の遺留品や現場からは犯人の指紋が検出されてしまう。まあ「お約束」と考えればいいのだろうが、鉄壁のアリバイを作る犯人が例外なくナイフ等の使い手で、指紋にも頓着しないというのは考えにくいのだが。

 

        

 

 最初の事件は小田原城址公園、20歳代半ばの美女が夜の公園でタオルケットを掛けられた上から刺殺された。被害者の足取りを追った神奈川県警淡路警部は、駅近くの喫茶店で被害者が40歳ほどの男、35歳くらいの美女と一緒にいたことを突き止める。しかし以降、事件捜査は進まず2週間がたった。

 

 この事件を取材した伸介&美保だったが、その「週刊広場」の記事を見た読者から被害者の身元に関するヒントが寄せられた。被害者は久慈に関係ある女のようだ。現地に飛んだ2人は、被害者が後妻に入っていた老富豪が最近交通事故で死んだこと、被害者の老いた母親がやはりタオルケットを掛けられて刺殺されたことを知る。

 

 岩手県警・神奈川県警の合同捜査で、有力容疑者の男女が浮かぶのだが、例によって鉄壁のアリバイが立ちふさがる。母親が花巻の自宅で殺された時刻には、2人は盛岡発東京行きの<やまびこ>に乗っていて、見送った証人もいる。さらに東京駅の乗り換え時に土産を受け取った証人、<こだま>に乗り換えて熱海で降りるところを出迎えた証人もいる。これらは2人が呼んで来てもらった「作られた証人」だが、証言は揺るがない。

 

 このトリックは半分くらい分かりました。でも添付の時刻表が不十分で、ちょっとアンフェアかな。まあ新幹線には慣れた僕ですから、分かって当然かもしれません。