久しぶりに<刑事コロンボもの>の未読作品が3冊まとめて手に入った。いずれもW・リンク&R・レビンソンの手になるノーベライゼーションで、今日から3日間で紹介したい。1972年発表の本書は、脚本が「処刑6日前」などのサスペンスで鳴らした作家ジョナサン・ラティーマーによるもの。登場する犯人は、蘭を愛する初老の男で少しアクティブなネロ・ウルフといった印象だ。
蘭の蕾を「娘たち」と呼んでいつくしむジャーヴィスだが、投資の失敗から屋敷を手放す危機に直面していた。目を付けたのが、情けない甥のトニー。W不倫で家庭崩壊中だが、妻のキャサリンに戻ってきてほしいと願っている。彼には巨大な信託財産があって、それを引き出せれば妻も戻ってきてくれる望みがある。
しかしそれは、非常時にしかまとまって引き出せない。ジャーヴィスは偽装誘拐をもちかけ、身代金として50万ドル引き出してはどうかと作戦を練る。

トニーが誘拐されたように見せかけ、彼の愛車に弾痕を残して谷に落とした。そしてキャサリンに身代金請求の電話をし、自ら身代金受け渡し役を務めることにした。いずれ警察が介入してくることは計算済みだったが、やってきたのが殺人課のコロンボ警部だったことから目算が狂い始める。
例の安葉巻をくゆらせながら温室に入ってきた警部を、ジャーヴィスはたしなめる。「娘たちに有害だ」というのだ。それでもコロンボは何度もやってきて雑談をしていく。ようやく彼を振り切ったジャーヴィスは、トニーの隠れ家に行くがトニーが欲を出したことから、結局殺してしまった。
50万ドルを隠した上で、キャサリンに容疑がかかるような仕掛けをするのだが、それはやはり些細なことから破綻してゆく。急場の思い付きとして.32口径ブローニング2丁のすり替えは出色だし、コロンボの部下を操る手法も上手かったのだが・・・。
品種改良されていない蘭はとても繊細で、素人の手には余ったようです。それを護りたかったジャーヴィスの心根は、最後の1ページで見事に表現されていました。こういう細部が脚本(だと思いますが)の妙ですね。