2019年発表の本書は、「京都ぎらい*1」の著者井上章一教授と、「テンプル騎士団*2」の著者佐藤賢一氏の歴史対談。なんでも本書の前に井上教授(建築意匠学)が「日本史のミカタ」という対談本を出版していて、世界史版の対談者に佐藤氏を指名したとのこと。佐藤氏は中東から欧州にかけてが専門の歴史作家だからよい人選と思うが、井上教授自身は京都の宣伝マン(失礼!)と思っていたので、歴史書を著されるとは意外だった。
対談は佐藤氏のリアルな歴史観からの突っ込みに、井上教授が(はんなりと)ボケるトーンで進む。アレキサンダー大王の時代から近未来(*3)にいたるまで「ミカタ」を変えた裏学説が飛び交う。例えば、
・世界の歴史を作ったのは、ユーラシアの遊牧民族(匈奴・フン・スキタイ・元等)
・王は血統が要るが、皇帝は誰でもなれる。カエサルにならいナポレオンもそうした
・ムハンマドは最後に現れた予言者なので、イスラム教が最新鋭の宗教

・中国四千年の歴史で、漢民族の王朝は3つしかない
・中国には宋以降、貴族はいない。科挙に通った官僚だけが支配する
・中世の教会はラテン語の聖書で知恵を独占したが、活版印刷と各国語への翻訳で聖書が行き渡り力を失った
・欧州諸国はインドの香辛料などを求めたがオスマン帝国などに陸路を阻まれ「大航海時代」に入る
・ロシアは攻め込まれると退き、敵の補給線が伸びきった時反撃するのが常套手段
・日英同盟は、英国がロシアのインドへの南下を牽制するため日本を利用したもの
・欧州各国はWWⅠで多大の犠牲を出し「もう戦争やだ」と思ったが、日本はそう思わずWWⅡに突入した
・歴史遺産が大事なイタリアは、WWⅡ時たった一度の空襲で降伏した
井上先生、立派な歴史家振りでした。日本史版も探してみましょう。
*3:日本がイスラム国家になる!?