新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スパイたちへの鎮魂歌、完結

 1991年発表の本書は、3ヵ月連続紹介してきたフレデリック・フォーサイスの<騙し屋4部作>完結編。聴聞会はサム・マクレディに同情する声も上がり始めていたが、最後に紹介された件は、彼がカリブ海にある英領バークレー諸島の独立騒動の折にとった意表を突いた(つまり越権行為をした)ものだった。

 

 1990年末、マクレディはフロリダでディロンという偽名の外交官として、CIAのセミナーに参加していた。その時バークレー諸島では、独立と新首相選挙の準備が進んでいたが、米国帰りの富豪と社会主義者の候補が首相に名乗りを挙げ、独立反対派もパブテスト派の牧師を擁立して3つ巴の闘いが起きていた。

 

        

 

 そんな中フロリダ州の警官が休暇でバークレーを訪れ、何かを見つけて急遽帰国しようとした。しかし彼が乗り込んだ小型機は、洋上で爆破されてしまう。また島で最後の務めをしていた総督モバリー卿が射殺された。

 

 2つの事件を知り、マクレディは島に渡る。小型機爆破はフロリダから警官が来たし、卿の射殺はスコットランドヤードが警部補を派遣、地元警察と合同捜査を始めている。独立反対派は切実に総督を交代させたがっていたし、2人の首相候補も経歴が不透明で怪しい。

 

 外交官のカバーを得ているマクレディは、3つの組織の警官たちと交わり、独自調査もして真相をおおむねつかんだ。そこで彼は自らを臨時総督に任命する文書を作り、一気に事件の解決と、この島の安定を図る作戦に出る。

 

 バークレー諸島をめぐる陰謀を阻止する他「Who done it?」の興味もある、シリーズ中の最高傑作です。犯人あてについては、僕は分かりましたね。スパイスリラーより、たくさん本格ミステリーを読んでいますから。冷戦が終わり、リストラされることになるスパイたちへの鎮魂歌でした。引退したマクレディが釣りを楽しんでいて「サダム・フセインのクエート侵攻」を知るラストが印象的でしたよ。