2018年発表の本書は、フリーライター小野一光氏が凶悪殺人犯数人にインタビューし、彼らの素顔/本音を取材したもの。週刊誌記者は、新聞・TVのようにリアルタイムに事件を追うことができない。週に一度の締め切りがあるためで、例え特ダネをつかんでもタイミングによっては陳腐になってしまうこともある。そのため、進行形の事件より一通り落ち着いた事件の深堀や、派生取材をすることが多い。週刊誌向きのネタを、新聞の記者から譲られることも(当然逆も)ある。
確定した死刑囚や、ほぼ結果の見えた判決間際の被告人などは、そういう意味でいい取材相手だ。筆者は、さほど凶悪でない受刑者も含めて、多くの取材をしている。今回取り上げられたのは、
1)大牟田4人殺人事件
2)北九州監禁連続殺人事件
3)尼崎連続変死事件
4)近畿連続青酸死事件
などである。

1)の事件は、2004年に小規模な暴力団北村組の一家4人が、付き合いのあった貸金業の女性と息子2人、息子の友人の合計4人を殺した件だ。組長とその妻、息子2人の全員に死刑判決が出ている。筆者は実行役として中心的な役割をした組長の長男に、何十回も接見して本音を引き出している。
暴力団の家に生まれたためか、少年院に入れられていた期間も長い。高校では相撲部に入り、そこでも暴力を振るった。「蚊がとまったら叩くやろ。人も一緒や」と豪語する。邪魔になれば「叩いてしまう」のは当然なのだ。その一方、死刑が確定しているのに「刺青の下絵描き」がうまく、将来技を磨きたいと夢も語る。
4)の事件は、2013年に結婚したばかりの夫を青酸で毒殺したとして逮捕された「後妻業の女」。以前結婚していた3人の夫も不審死していて、結婚にいたらなかった交際相手も含めると、犠牲者は11名に上るという。
彼女は公判でも接見でも「覚えていない」を繰り返す。認知症が疑われたが、診断した医師がうなるほど「うまい回答」をするという。被害者への賠償はどうすると聞かれて「金なんかあらへん。もう一人殺せということか?」と反論している。
僕なりに判断するに、4)の事件以外は、子供の時からの環境が悪く更生不能になって無軌道な犯罪に手を染めたもの。しかし「後妻業」だけは冷徹な計画犯罪ですね。この犯人だけは救いようがありません。