2022年発表の本書は、以前「基軸通貨ドルの落日*1」を紹介した評論家中野剛志氏のインフレを研究した経済安全保障論。ロシアのウクライナ侵攻後の例えば中東紛争は起きていない時期の論考だが、確かに筆者の予測する方向に世界は動いている。
世界的なインフレは4度あり、今5度目を迎えている。4度までは、医療技術等の向上による人口増加が原因である。
・13世紀ころ、食料価格が上がって格差が拡大、中世欧州の秩序が破壊された
・16世紀ころ、欧州の森林資源が喪失するインフレ、ピューリタン革命等が起きた
・18世紀、実質賃金が下落し社会が不安定化、米国独立戦争やフランス革命が起きた
・1970年代、賃金下落に加え金利が上昇、冷戦が終わり新自由主義が台頭

4度目で初めてスタグフレーションが発生している。そして2020年からは5度目がやってきた。この原因は、気候変動・各国の軍拡・長期的投資の減退である。欧米のリベラル派は、民主主義を世界に広め経済をグローバル化すれば全体が良くなると考えた。しかし例えば民主化しない中国をWTOに入れるなど、大きな失敗を繰り返す。欧州が政府債務の上限を決めているのも誤り(*2)。
5度目のインフレは、ブロック経済化と国際紛争増加によってもたらされる。そこで日本の取るべき道は恒久戦時経済体制の確立で、
・資源、エネルギーの安定供給確保
・サプライチェーンは効率性や利益より安定を求める
・重要産業、重点技術に対する公共投資の拡充
・消費税廃止、内需の拡大、格差の是正を実現する大きな政府
・資本移動に対する規制や、特定の財に限定した戦略的価格統制
をすべきとある。
調べてみると筆者には「TPP亡国論」などの著書があり、筋金入りの反グローバリズム主義者だったことが分かります。不安定化した国際秩序下では、グローバリズムは難しいことですが、それを2010年頃から主張し続けているのは、凄いと思います。
*2:自国通貨建ての政府債務は、経済成長に必須との意見