新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

スパイスリラー

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ル・カレの最高傑作巨編(後編)

スマイリーは解雇された要員の内から何人かを復職させたのだが、その中にサム・コリンズという男がいる。抜け目のない男で、コウ兄弟らの件についても役に立つのだが、スマイリーは信頼できない部分があると思っている。前作でのモグラの息が掛かっている可…

ル・カレの最高傑作巨編(前編)

1977年発表の本書は、先月紹介した「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」に続くジョン・ル・カレ<スマイリー三部作>の第二作。作者の最高傑作との評価され、英国推理作家協会賞も受賞した900ページを越える巨編である。 前作で英国諜報部<サーカ…

ハッカー浦井と刑事桐野、再度の対決

2020年発表の本書は、これまで「スマホを落としただけなのに*1」「同囚われの殺人鬼*2」を紹介した、志駕晃のサイバーサスペンス。全2作の続編で、ハッカー浦井、刑事桐野だけでなく、最初の被害者だった富田麻美らも登場する。 初登場は、電力会社の子会社…

最強タッグの政治スリラー(後編)

「砂漠の嵐作戦」に参加した陸軍特殊部隊員だったダンカンも、すでに50歳を越え血友病に悩んでいる。心身ともに追い詰められた中で、ジンドルクが仕掛けるテロを未然に防がなくてはならない。オージーは、ジンドルクの戦力はサイバー空間では凄まじいが、リ…

最強タッグの政治スリラー(前編)

2018年発表の本書は、第42代米国大統領ビル・クリントンと「ナッシュビルの殺し屋」でデビューし総売り上げ3億部をほこるベストセラー作家ジェイムズ・パタースンが共著した政治スリラー。クリントン元大統領は学生時代からスリラー好き、いつかは書いてみ…

スマイリー三部作のスタート

1974年発表の本書は、昨年「寒い国から帰ってきたスパイ」を紹介した、英国スパイスリラーの巨匠ジョン・ル・カレの<ジョージ・スマイリーもの>。スマイリーは50歳代で、小太り短足のベテラン諜報員。「寒い国・・・」にも脇役で登場していたのだが、本書に始…

英国労働党の静かなクーデター(後編)

MI5のプレストンは、ついに国防省高官で情報漏えいをしていた者を特定した。しかし彼は、友好国南アフリカの外交官に操られていただけだった。南アに飛んだプレストンは、この停年間際の外交官の素性を洗うために、南アじゅうを走り回る。 外交官はWWⅡでドイ…

英国労働党の静かなクーデター(前編)

1984年発表の本書は、「King of Story Teller」フレデリック・フォーサイスの<政治スリラー>。今年「戦争の犬たち」を紹介しているが、それは軍事スリラーではあるが発展途上国の独裁者を倒す話と、金融市場での陰謀がからみあっていた。本書はさらに政治…

ヒギンズが描く「D-Day秘話」

1986年発表の本書は、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズの「D-Day秘話」。多くの作家が取り組むテーマだが、「鷲は舞い降りた」をはじめとする歴史冒険小説を得意とし、リアリティにこだわる作者ゆえなかなかの傑作に仕上がっている。 舞台となるのは、ドーバ…

ベルリンの壁と共に崩れた

以前レン・デイトンのリアルなスパイもの<バーナード・サムソン3部作(*1)>を紹介した。三作目「ロンドンマッチ」でシリーズは終了したと思ったのだが、実はその後3作が発表され、さらに1990年の本書で「7部作完結」となっていた。3部作はベルリンの…

伝説のスパイ、エルサレムに死す

2010年発表の本書は、ウィリアム・ピーター・ブラッティのスパイスリラー。この作家の名前は知らなかったのだが、映画「エクソシスト」の原作者(1971年)とある。他にユーモア小説も発表しているが、根底にあるのは宗教観だと解説にある。宗教への関心が「…

カルト教団への潜入捜査

1994年発表の本書は、以前デビュー作「警察署長」を紹介したスチュアート・ウッズのスリラー。アメコミ誌風の表紙で損をしているが、秀逸なサスペンスミステリーである。妻を亡くし一人娘のキャリーとも引き離されて服役しているウォーデンは、元DEAの麻薬取…

ヒギンズ作品の中で一番好きな

1995年発表の本書は、いくつも紹介してきたジャック・ヒギンズの<ショーン・ディロンもの>。以前「悪魔と手を組め」でのディロンが一番いいと評したのだが、本書はディロン以外の登場人物もみんな格好いい。全体として、一番好きな作品である。 北アイルラ…

好調な現代<軽スパイスリラー>

2020年発表の本書は、長くヤングアダルト向けのアクション小説やTV番組脚本を手掛けてきたディヴィッド・ギルマンが、本格的なスリラーに挑んだシリーズの第一作。こういう言い方がいいかは微妙だが、ハードボイルドに<軽ハードボイルド>があるように、<…

殺し屋レインの東京逃避行

2002年発表の本書は、元CIAで日系企業の弁護士もしていたというバリー・アイスラーのサスペンス小説。日本語を流ちょうに操り、日本滞在経験もあるという作者は、日系の殺し屋レインが主人公のシリーズを書き続けている。 舞台は東京、日英バイリンガルのレ…

不時着機がもたらす危機

アリステア・マクリーンの冒険小説をデビュー作「女王陛下のユリシーズ号」以降、第四作「最後の国境線」まで紹介してきた。本書は「最後の・・・」と同じ1959年に発表された第五作。舞台は酷寒の大地、グリーンランドである。 マイナス70度にもなる極北の地で…

厳寒の中ソ国境に潜入するクィラー

1978年発表の本書は、昨年デビュー作「不死鳥を倒せ」を紹介したスパイ作家アダム・ホール晩年の作品。地味だが優秀な諜報員であるクィラーだが、上司パーキスとの仲は最悪。部下をチェスのコマのように思っている彼は、平気で嘘もつくし部下を死地に追いや…

神話となった共産主義の世界

昨年アリステア・マクリーンの第二次世界大戦三部作の最後「シンガポール脱出」を紹介したが、それに続く作者の第四作が本書。ハンガリー動乱から2年後の1959年に発表されている。舞台は氷雪が舞うハンガリー、ソ連の抑圧が強化され秘密警察AVOの影に民衆は…

追い詰められる黒人枢機卿

昨日に引き続き、本書はサイモン・クインの<異端審問官もの>。シリーズ第四作(1974年発表)で、昨日紹介した事情で邦訳は2作目。今回チェルラ異端審問所長とキリー審問官に与えられた任務は、アフリカのトランス・コンゴ出身の黒人枢機卿ジョン・ミーマ…

ヴァチカンの「殺さないスパイ」

1974年発表の本書は、匿名作家(*1)サイモン・クインのスパイスリラー。ヴァチカンの聖務省が持つ異端審問所の審問官(Inquisitor)フランク・キリーのシリーズだ。原作は6冊出ているのだが、なぜか第一作、第三作が翻訳できなかった。そこで第二作の本書…

さよなら!フェルプス君

このDVDは、これまで2~6シーズンまでを紹介してきた「Mission Impossible」の最終シーズン。1973年に放映されたもので、いくつかのエピソードを覚えていた。高校生になっていたはずだが、欠かさず見ていたものと思われる。大好きなリンダ・ディ・ジョージ…

出来てしまった大量破壊兵器

1985年発表の本書は、音楽プロデューサであるポール・マイヤーズが書き始めたエスピオナージの第一作。作者は、小澤征爾氏らとも交流のある欧州では高名な人物だという。主人公のマーク・ホランドは引退した英国情報部員。今は音楽プロデューサとして、恋人…

銃器マニアの描くガンファイト

2016年発表の本書は、デビュー作「The Poisoned Rose」で2001年の米国探偵作家クラブ賞ペーパーバック賞を獲った、ダニエル・ジャドソンのスパイスリラー。かなりの銃器マニアで、コネチカット州在住というくらいしか情報がない作家である。おおむね1作/年…

カレンのルーツとネルの活躍

このDVDは「NCIS LA:潜入捜査班」のシーズン5。前シーズンの最後に、心身ともに痛手を受けたディークスの復帰から物語が始まる。これまでは「ただの相棒」としてやや頼りなくて愛嬌のある彼と距離を置こうとしていたケンジーだが、ここに来て「支えなくて…

自伝的スパイスリラーの古典

1928年発表の本書は、「月と6ペンス」などで知られる文豪サマセット・モームの自伝的スパイスリラー。作者自身WWⅠではスイスを拠点に諜報活動に従事し、大戦末期にはロシアでの革命を阻止しようと現地で工作をしたが、任務は失敗に終わった。 冒頭、作家の…

二重スパイの愛と忠誠

冷戦期のリアルなスパイスリラーと言えば、ル・カレ、バー=ゾウハー、デイトンらの名前が挙がるが、もうひとりグレアム・グリーンも有名な作家だ。しかし、これまでどの作品も読んだことが無かった。今回入手できたのが、1978年発表の本書。 1963年、英国MI…

起きなかった真実の物語

2013年発表の本書は、元イスラエル軍准将エフタ・ライチャー・アティルの作品。同国の秘密情報機関モサドの内幕を描いたもので、作者はモサドではないが軍の情報担当だったことから、モサドについての知識や人脈は多いと思われる。「はじめに」で、作者は本…

還暦カルテット、逃避行から反撃へ

2022年発表の本書は、歴史ミステリ作家ディアナ・レイバーンが「年配女性のカッコよさ」をテーマに書いたスパイスリラー。WWⅡで各国は、多くの諜報機関を作った。そのいくつかは正式に国家所属となった(例:OSS⇒CIA)が、闇組織として残ったものもある。<…

片目のジャックのアヘン戦争

1987年発表の本書は、従軍経験のあるフリージャーナリスト、アンドルー・カプランのスパイスリラー。作者はテルアビブ大学在学中に<六日間戦争>に参加、米国に帰国後も陸軍に入隊している。本書ともう1篇、片目のジャックことジャック・ソーヤーものを書…

地味なスパイが追うナチ戦犯

1965年発表の本書は、米国探偵作家クラブの最優秀賞に輝いたスパイ小説。本書でデビューしたアダム・ホールと地味なスパイであるクィラーは、以前「暗殺指令タンゴ」を紹介したことがある。スパイスリラーは古典である「外套と短剣」ものから、シリアスな、…