スパイスリラー
2016年発表の本書は、これまで「窓際のスパイ」「死んだライオン」を紹介したミック・ヘロンの<泥沼の家>シリーズ第三作。英国情報部の落ちこぼれが送られる組織<泥沼>には、アル中、ヤク中、仲間に暴力、大ドジを踏むなど各所で持て余した諜報員や管理…
英国のEU加盟計画などがあり、大使館の文書係は多忙を極めていた。だから本来なら臨時職員を充てることはない仕事を、ハーティングに任せざるを得なかったわけだ。彼の有能さは役に立ったが、それが事件を招いている。 ハーティングは、目立たない男。休日は…
本書は回顧録「地下道の鳩」などを紹介したスパイ作家ジョン・ル・カレの、本格的なエスピオナージュ。1968年の発表で、当時は英国のEU(EECだったかな)入りや、東西ドイツ再統一などで世論は沸騰、西ドイツやベルギーではデモの嵐が吹き荒れていたころ。ま…
このDVDは、以前シーズン2&3を紹介した「Mission Impossible」のオリジナル版シーズン4。マーチン・ランドーとバーバラ・ベインの夫婦が降板して、変装名人役パリスとしてレナード・ニモイが加わった。「Star Trek」でヴァルカン人との混血スポック副長…
1989年発表の本書は、冒険小説の雄ジャック・ヒギンズのノンシリーズ。これまで「鷲は舞い降りた」などの戦記物や、ファーガスン准将やショーン・ディロンらのシリーズを多く紹介しているが、作者にはノンシリーズの傑作も多い。いろいろな意味でしがらみが…
2014年発表の本書は、カナダ生まれのジャーナリスト、アダム・ブルックスのデビュー作。東アジアを中心に30ヵ国を巡った人で、本書は北京駐在時の自らの経験から執筆したもの。 大柄で体力も知力もある技術者リー・ファッション(通称ピーナッツ)は、1989年…
本書は、英国推理作家協会賞(スティール・ダガー賞)を受賞した2012年の作品。作者のチャールズ・カミングは、現代英国のスパイ小説の旗手とも言われている。英国秘密情報部(SIS)に誘われたこともあるのだが、誘いは断ってスパイ小説を書き始めたという。…
本編は、以前紹介した「NCIS-LA:極秘潜入捜査班」のシーズン2のDVD。メインキャラのG・カレンとサム・ハンナが前面に出ている比率が、シーズン1より少し下がった。彼らは立派な「相棒」で、その会話(特に2人で車に乗っている時)は長く連れ添った夫婦の…
昨年シーズン3を紹介した往年のTVドラマ「Mission Impossible」。シーズン2と3が好きなのだが、今回ようやくシーズン2のDVDが手に入った。50年以上前のドラマは、Bookoffでもなかなか見つからないのだ。 このシーズン2が放映されたのは1966年、今回から…
1999年発表の本書は、CNNのジャーナリストから謀略小説作家に転じたダニエル・シルヴァの第三作。デビュー作「マルベリー作戦」は第二次世界大戦中の謀略戦を描いたものだったが、第二作「暗殺者の烙印」では現代に舞台を移し、CIAのエージェントであるオズ…
2013年発表の本書は、先日「窓際のスパイ」を紹介したミック・ヘロンの<泥沼の家シリーズ>第二作。作者は本書で英国推理作家協会(CWA)賞を受賞している。MI5の落ちこぼれ組織<泥沼の家>では、前作の闘いで2人の欠員ができた。補充されてきたのはやり…
本書は2020年に発表された、ロシアの作家セルゲイ・レベジェフのスパイスリラー。作者は地質学者で、ロシア北部や中央アジアでの現地調査を7年続けた後作家に転じた。詩人・エッセイスト・ジャーナリストでもあるという。作風としてはソ連崩壊やロシアの闇…
古くは「外套と短剣」のスパイスリラーがあり、ジョン・バカンの「39階段」以降隆盛となった英国のこの手の作品群。「007」様の派手なアクション映画も増えて、一時期非常に増えた。しかし冷戦終結とともに全体的に低調になり、今は「もっとリアルな諜報機関…
2010年発表の本書は、トム・ウッドのデビュー作。作家の楡周平が「これぞ冒険小説!」と絶賛したと帯にある。僕の読後感としては「これは英国のグリーニーだ」というもの。いまやトム・クランシーの後を継いでいる米国の軍事(スパイ)スリラー作家マーク・…
シミュレーション・ウォーゲームの中には戦争・戦闘だけでなく、国際謀略(外交ともいう)をテーマにしたものもあった。この種のゲームを漁っていた30歳前後、必然的に国際謀略小説(含むノンフィクション)も読むようになっていた。なかなか日本人作家でリ…
以前元警視総監吉野氏の著書「情報機関を作る」を紹介したが、実際体験した例ではなく、諜報活動の実態例をジョン・ル・カレやフレデリック・フォーサイスの著書を引いて説明していた。近年よりリアルなスパイスリラーが増えていて、吉野氏も引用できる小説に…
僕が中学生の頃、大好きで毎週見ていたのがこの番組「Mission Impossible」。邦題は「スパイ大作戦」というのだが、この題名は好きでなかった。後にトム・クルーズ主演でシリーズ映画になるが、僕はオリジナルの方がずっと好きだ。先日伊勢佐木町のBook-off…
このDVDは「NCIS:ネイビー犯罪捜査班」のスピンアウト。先月紹介した「NCIS:シーズン6」で、ギブスたちがロスアンゼルスで捜査にあたったエピソードがあった。その拠点となったのが「NCIS:ロスアンゼルス」の組織。潜入捜査官カレンはギブスとは旧知の仲…
スパイスリラーの作者で、実際に情報部門を経験した人は多い。彼らの作品は「007ばり」の超人スパイものにはならず、アクションはあるにせよ内省的で、時には哲学的ですらある。本書(1980年発表)の作者テッド・オールビュリーもその一人。英国バーミンガム…
本書(1999年発表)も、ジャック・ヒギンズの「ショーン・ディロンもの」。英国首相の「私的軍隊」と言われる対テロ専門組織の3人、ファーガスン准将、バーンスタイン警視、元IRAのディロンが活躍するシリーズだ。英米の同盟関係もあって、ホワイトハウスの…
これまで何冊も紹介しているジェラール・ド・ヴィリエの「プリンス・マルコもの」。1965年から年間4冊ペースで発表され、2008年まで書き継がれた。総計174作品。日本には1980年までの60作品は、創元社や立風書房が翻訳を出していた。その後日本での新作発表が…
第二次世界大戦直前の緊迫化する国際情勢を背景に、それまでの「外套と短剣」式のエスピオナージをシリアスなものに変えたのがエリック・アンブラー。これまで、 ・第三作「あるスパイの墓碑銘」 ・第五作「ディミトリオスの棺」 を紹介している。今回、第六…
以前オレゴン・ファイルやアイザック・ベルものなどを紹介したクライブ・カッスラーだが、その作家デビューは1973年の「海中密輸ルートを探れ」で、主人公は「国立海洋海中機関(NUMA)」のダーク・ピットとその仲間たちだった。上記の紹介記事で「ピットも…
1972年発表の本書は、以前「アンドロメダ病原体」などを紹介した才人マイクル・クライトンが別名義(ジョン・ラング)で書いたサスペンススリラーである。作者は医師であるが本当に科学知識豊富な人で、本書にはメインフレーム時代のコンピュータをハッキン…
本書は1980年発表、東西冷戦はそろそろ終わりを迎えるころなのだが当事者にはそんなことは分からない。軍事の競争もそうなのだが、諜報戦もピークに達していた。この時代を裏の裏から描くことができるとすれば、マイケル・バー=ゾウハーは最高の作家といっ…
007譚を引き合いに出さなくても、英国人の冒険小説好きは有名な話だ。エンタメ風のものでなく、シリアスな冒険小説の人気も高い。僕も学生の頃にジョン・バカンの「39階段」、文豪サマセット・モームの「アシェンデン」などの名作を読んで、強い印象を持って…
本書は「戦闘級のチャンピオン」マーク・グリーニーのグレイマン・シリーズの第四作。目立たない男グレイマンこと元CIAの工作員で暗殺者のコート・ジェントリイが主人公。前作でメキシコマフィアを打ち負かしたものの、故郷のアメリカには戻れなくなってしま…
2018年発表の本書はカレン・クリーヴランドのデビュー作なのだが、出版前から映画化が決まっていて、出版されるや普段スパイスリラーに興味のない人たちまで購入したという話題作だ。作者は本書の主人公であるヴィヴィアン・ミラー(ヴィヴ)と同じCIA分析官…
本書の作者ハモンド・イネスは、英国冒険小説の先駆者である。1937年に「ドッペルゲンガー」でデビュー、一貫してジョン・ブル魂にあふれた英国男の冒険譚を書き続けた。別名含めて40冊ほどの著書があり、「キャンベル谷の激闘」や「メリー・ディア号の難破…
本書(1996年発表)は、ジャック・ヒギンズの「ショーン・ディロンもの」の1編。これまでに「嵐の眼」「サンダーポイントの雷鳴」「密約の地」を紹介してきたが、いずれも初代「グレイマン」ともいえるディロンが活躍する物語だった。しかしその中でも、デ…