新城彰の本棚

ミステリー好きの自分勝手なコメント

アバロンヒル(1)

 シミュレーション・ウォー・ゲームの起源は、図上演習ツールである。日本海軍は真珠湾攻撃にあたっても、図上演習を行い戦果はあったものの味方の空母にも被害が出た。それでも海軍は作戦を決行、艦隊の損害無く米国の主力艦の多くを撃破することができた。これで驕りが出たのか、ミッドウェー攻略の演習では参謀長がサイコロの目を修正、被害を少なくして演習を続けさせるという「事件」が起きた。ミッドウェー海戦の結果は、ご存知の通りである。

 
 米国には古くからシミュレーション・ゲームの市場があり、零細規模なものも含めて多くの出版社があった。メジャーだったのは、SPI(Simulations Publications)とアバロンヒルの2社。1970年代後半には日本でも入手できるようになったのだが、日本語訳が無かったりあっても抄訳だったりして一部マニアのものでしかなかった。
 

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 やがてホビージャパンがきちんとした翻訳を付けて販売するようになり、専門誌「タクティクス」も創刊してブームが来た。ホビージャパンが、SPIよりアバロンヒルのものをより多く輸入したので、メジャーはアバロンヒルものになった。
 
 写真はアバロンヒルの「戦争と平和」、1806~1815年の欧州におけるナポレオン戦争のすべてをシミュレートできるゲームである。「タクティクスⅡ」に始まる「アバロンヒル・クラシックス」という軍事シミュレーション中心のシリーズがあって、比較的簡単なルールのもとで歴史の追体験ができた。
 
 クラシックスのゲームとしての難易度は、10段階で3~4くらい。コマの数も100~200個くらいで、割合苦労することなく、いくつかやってみた。「戦争と平和」はもう少し難易度が高い。6~7くらいの印象で、コマも500個はある。10年間のキャンペーンをやれば(実際完遂したことはない)、丸2日はかかるだろう。
 
 王制を倒して市民の意気が高揚しているフランス軍は、ナポレオンとその配下の有能な将軍たちに支えられて戦いの主導権が取れる。最初の敵であるオーストリアも、その後ろにいるプロシア・ロシアにしても十分な将軍がいなくて、兵力は多くても作戦の自由度が低い。
 
 このゲームでは、将軍が同じヘクスにいないと歩兵は動くことすらできない。だからといって同じヘクスに多くの兵隊が居ると食料不足などで、損耗(兵力が減ること)してしまう。決戦の場所にどれだけ兵力を集中できるかが勝負を分けるから、分進合撃をどうするかにプレーヤーは悩むことになる。これは当時の司令官の悩みと同じで、この点がシミュレーション・ゲームの醍醐味である。
 
 いくつかのゲームを体験して、ちょっとだけ歴史が分かったような気がしたものだ。まあ、ナポレオン気分にひたるところまでは行けなかったが。
 
<続く>